【リレー小説】スカイハイ転生学園！～職業体験編～ (ページ1)

今日:8 hit、昨日:10 hit、合計:4,633 hit

黒板ワルツ【ハチ・プルメリア】ページ1

水族館部部室にて。
鮮やかで種によるが少しばかりか艶やかな魚たちが自由に泳ぐ水槽。
その水槽が、部屋を仕切る棚と化していた。
水槽に設置されているポンプが時たま泡を吐く。
その泡に向かって突進、いや突進するかのように泡に向かって泳いでいくカクレクマノミ・『すおう』。
私はすおうの滑稽ともとれる様に「くくっ」と思わず忍び笑いをしてしまう。
『笑わないでよ』とでもいいたげにすおうがまだ忍び笑いが収まっていない私に目を向ける。
すおうは私の気持ちが判らないはずなのに、そういった行動をするとは不思議なもんだ。
魚は奥が深い。すおうの行動を見てしみじみ思っていると、「あ、メリアちゃんいたー！」とガラリと部室と廊下を隔てている引き戸が開いた。
おそらく走って来たのか、少しつんのめりながら先ほどの声の主が入って来た。
赤い髪が特徴的な少女。彼女は私の先輩であり、ルイス・キャロルの転生者でもあるハチ先輩である。
ハチ先輩は片手に弁当が入っていると思われるバスケットを握っており、鼻歌交じりで自分の机へと歩いていく。
彼女の頬は紅潮しており、興奮しているということは間違いなかった。
さらに鼻歌交じり、スキップ、今の時間、右手に握られているバスケットから察するにお弁当が楽しみなんだろう。
タタッ…コツコツ、などと不規則な足音の演奏を先輩の上靴が奏でる。
胸のネクタイが彼女の感情と呼応するかのように、楽しそうに弾む。
ハチ先輩の姿は、まさにマッドハッターやハートの女王が住んでいる不思議の国の創造主のものだった。
先輩は軽やかで踊るかのような足取りで席に着くと、右手のバスケットを慎重に置いた。
　「メリアちゃん、これみて！」
　「なんでしょう？」
先輩はいつも、私の事を『メリアちゃん』と呼ぶ。『プルメリア』じゃ長いから『メリア』なのだそうだ。今はどちらでもいいが。
ハチ先輩はゴクリと息を呑みながら、バスケットの蓋を慎重に開ける。
その手つきはまるで刑事ドラマ等でおなじみの爆弾処理班のようだ。
パカリ、蓋が開いた。中にはお弁当箱が入っていた。マトリョーシカだな、こりゃ。
今度は素早く蓋を開けた。
中には普通のオムライス。
黄色い玉子焼きにかけられたケチャップの赤がよく生えている。
その横にはちょこんとパセリで緑を追加。
彩りは完璧で、さらに玉子の優しい香りもあるのだから食欲をかなりそそる逸品となっていた。
　「じゃーん、オムライスでーっす！」
　