同意、その先に【庵治 炎寿】 ページ38
「……めちゃくちゃ同意」
一人の少女が、ラクガキだらけの壁にもたれながら呟いた。
目を伏せ、腕をくみ、耳をぴったりと壁にくっつけている。
少女は、全神経を耳に集中させることで壁の向こうで繰り広げられている会話を何とか聞き取ろうとしているようだった。
彼女の名前は庵治炎寿。
犯罪組織・オーバードーズの一味であり、それであって彼らと敵対しているスカイハイ転生学園の生徒。
白黒曖昧な立場に立たされている彼女は、他の生徒と共に職業体験に参加していた。
そんな職業体験も今日で最終日。最終日には、オーバードーズ軍が押し寄せるという最高のサプライズが待っていた。
無論、生徒となっている炎寿は本当の仲間であるオーバードーズと戦わなければならない。
その微妙な気持ちを紛らわせるために、こっそり消防署から抜け出し、仲間が潜んでいる倉庫へとやってきていたのである。
「そりゃそうだもんね、あたしらは踏み台なんだ。さすが中佐」
炎寿が感心したかのように、そっと両手を打ち鳴らす。
まばらな手拍子が、ラクガキだらけの壁にしみこんでいく。
その動作から、自分がこの場所にいるのがバレてはいけないということが判る。
少女は、手を打ち鳴らすのをぱたりとやめると霞んで見える、賑わう商店街を睨みつけた。
「またやられるのを目で見なくちゃいけないのか。はぁ、めんどくせえ」
重たい足取りで、彼女は地面を蹴る。
☆★☆★
「一人倒しました!」
明朗快活の四文字をそのままあらわしたかのような、大きな声があがった。
その声を発したのは、先ほど体験先を抜け出してきていた炎寿であった。
先ほどとは打って変わって、明るい声。しかし、その声を訝しむものは誰一人いない。
「OK!庵治、よくやった!」
と、こちらもまた大きな声で答える。
攻撃と、反撃と、叫びが戦場と化した商店街を揺らす。
戦場となった商店街には、賑やかさもひとかけらも残っていなかった。
まさに混沌といった地面に靴を食い込ませながら、炎寿は仮の魔法である火属性の魔法を本当の仲間に向けて繰り出す。
炎をもろに喰らった仲間が、苦しそうな呻き声を残して地面に倒れ込んだ。
その衝撃で、ドスン、と土ぼこりが空気中を舞う。まるで、彼の気絶を示すかのように。
彼の横にクナイが突き刺さったのを見て、炎寿は戦場に上司が訪れたのを知った。
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨読@低浮上…?なのか?(プロフ) - まだ四十八話だったのですが、続編の考査編へ移行させていただきます!これからも宜しくお願い致します! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新しました。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新します。 (2020年7月10日 8時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - 更新しました。 (2020年6月30日 18時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - お久しぶりです。更新いたします。 (2020年6月30日 17時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スカイハイ転生学園一同 x他9人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年5月12日 16時