壱弐参でもプライドがないや【勘解由小路 琥珀】 ページ33
軋む緞帳。
緞帳が開いて、ぱっと光がして、目が一瞬だけ眩んだと思うとロミオとジュリエットのあの名シーンのセット、役者が壇上に上がっていた。
「おお、ロミオ!あなたはどうしてロミオなん?」
文字通り精いっぱいの声を張り上げるのは、僕と同い年の彩葉タダである。
タダが台詞を言い終わった瞬間「カット!」と、戌亥が叫びながら丸めた脚本で膝を叩いた。
パン、と乾いた音がしたかと思うと戌亥は上下関係も忘れてタダに詰め寄っていた。
戌亥の指導力も、タダの演技力もどちらも本物なんだけど。
彼らから「伊予弁をいったん封じ込めてください」「でも、仕方ないやん」などと聞こえることから、先ほど炸裂してしまった伊予弁について話し合っているのだろう。
ていうかもう口論なんだけど。話し合いじゃないだろ。そもそも意味ないからやめろ。
心の中で愚痴り散らしていると、一年のマーキアの顔がそこにあった。
「どーしたんですかぁ、先輩?」
「別に、関係ないだろ」
やっぱり、マーキアは猫みたいである。
僕の心の中の愚痴だけではなく、戌亥とタダの言い争いも白熱してきているようだった。
もうちょっとで手が出て、殴り合いが始まるぞ。僕がひやひやしていると。
なんの前触れもなく、唐突の大音量の音楽が流れた。
モーツァルトのトルコ行進曲である。
「そろそろ終わって、再開したらどうです?」
自身の楽曲をかけた照明係は、そうだけ告げると顔をあちらにそむけた。
☆★☆★
演劇のホールに一旦おさらば。
僕らは外の待合のベンチに腰掛け、弁当を広げていた。
僕の弁当は単純におにぎり一個をタッパーに放り込んだというだけのもの。
他の生徒たちも各々持ってきた弁当の中身を頬張っている。
それに、口々に談笑しながら。
そんなどこにでもある、平凡で超くだらない時が過ぎていくのかと、僕は思っていた。
しかし、その時。平凡をバイクのエンジン音が突き破った。
不審に思ったグランさんが、立ち上がろうとする一部の人間を手で制し、彼らを代表して劇場を出て行った。
彼は劇場の主として、責任感を抱えていたことだろう。
そう思って、僕は新たなおにぎりを口に抛る。
五月蠅いエンジン音が弥増したかと思うと劇場の入り口をすごい速さで入って来た者がいた。
グランさんだ。彼は、普段と変わらない調子で「オーバードーズです」とだけ告げた。
あまりにも衝撃的な一言に、僕らはフリーズしたのだった。
プライドと魔法と【レイス・ウィスルト】→←他人と自分の延長戦【誕生時 ユズ】
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雨読@低浮上…?なのか?(プロフ) - まだ四十八話だったのですが、続編の考査編へ移行させていただきます!これからも宜しくお願い致します! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新しました。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新します。 (2020年7月10日 8時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - 更新しました。 (2020年6月30日 18時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - お久しぶりです。更新いたします。 (2020年6月30日 17時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スカイハイ転生学園一同 x他9人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年5月12日 16時