【リレー小説】スカイハイ転生学園！～職業体験編～ (ページ12)

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クラスの前まで足早に向かうと、存在感を殺して、息を殺して教室に入った。
　「猫寺さん、おはようございます」
　「うん、おはよ」
仲の良さを見せつけるかのように会話をする女子生徒たち。
彼女たちが笑う度に、胸の銘々に違ったネクタイが微かに弾む。
残念ながら、私は彼女らの中の一人しか知らない。(その一人である四季冷夏とさえもちゃんと会話をしたことがない)
第二回があり、またこのうるささに苛まれると思うと、背中で毛虫が五匹ほど競争したかのような悪寒が全身を駆け巡った。
話をするのが非常に面倒だったため、人と話すことがないルートを通って席に着いた。
たいしてやることもない。そう思って廊下を眺めていると、マジシャンルカが２-３の教室を横切って行くのが見えた。
　 ☆★☆★
数分してからチャイムが騒がしい教室に鳴り響いた。
私は「チャイムなんぞものともせず会話を続けるのではないか」と、考えていたが案外そうでもなかった。
さすがスカイハイ転生学園の生徒だ、チャイムが鳴ったと同時に一気に静かになった。
逆にその静けさが恐ろしい。そう感じていると、２-３の担任の雲隠先生が引き戸を開けて入って来た。
先生は迷いもなく教卓の前に立つと、「おはようございます。今日は職業体験ですね」。
雲隠先生の胸ポケットから、煙草の箱が覗いていた。銘柄は…「ダンデ」。
ああ、前に見たことある。スカイハイで一番売れている煙草だって、ニュースのおっさんが言ってた。
その後も長ったらしいお知らせが続いた。
先生が言うお知らせを右耳から左耳へ、片っ端から流していく。
　「では、各自引率の先生に従い、職業体験先へ行って下さい。頑張って下さいね」
先生はそう言って笑った。白い歯…ではなく、煙草の成分のお陰で少し黄ばんだ歯をのぞかせながら。
やはり、生徒たちの間(主に二年生)でまことしやかにささやかれていた「雲隠先生は寿命を縮めるために煙草を吸っている」という噂は正解だったらしい。
ならあんなに黄ばむことなんかない。そう考えるとなんだかいたたまれない気持ちになった。
「テトラさーん？」
気づけば、先ほど楽しそうに話していた女子生徒の一人が私の前で不思議そうに首を傾げていた。
　「あ、すみません」
同級生であるはずなのに、何故か敬語で話してしまう。それはあまりにも彼らと私の違いが激しいからなのか。真実は杳として知れないが。
　「………かったるい」
私は教室の電気を消した。