災藤*髪(3) ページ10
その後、私は毎日毎日、髪を伸ばし続けた。
髪のケアなんかしたことがなかったから苦労した。
任務の時、動きづらさはあったが、それでも貴方のことを思い続けて髪を伸ばし続けた。
ゆっくり、ゆっくりと、貴方の帰りを待っていた
10年後
「…Aちゃん、随分髪の毛伸びたわね」
キリカさんはそう言い、私の髪の毛をアレンジした。
私の髪の毛は、高く結んでくるぶしに届くか届かないかまで伸びた。
一時期軽く引きずっていたが、それで怪我をしてしまいさすがに仕事に影響するのはダメだと肋角さんに怒られてしまい、渋々この長さを維持した。
さすがにそのくらいなら許してくれるだろうし、きっと災藤さんもそうしているだろう。
「はい、災藤さんと約束をしましたから。
キリカさんに可愛くしてもらいましたが、今日切ってしまいますけどね」
「ふふ、いいのよ、やっと災藤さんに会えるものね
さぁ、できたわよ。」
「…本当に可愛い、ありがとうございます!」
キリカさんは大きな三つ編みをしてくれ、それに花をたくさん飾ってくれた。
まるで、外国の絵本に出てくるようなお姫様またいだ。
「えぇ、本当に似合っているわ。
おばちゃんはこの後用事があるから帰るけど、ぜひまた後日感想を聞かせてほしいわ」
キリカさんは微笑み、帰路へ向かった。
災藤さんが帰ってくるのは午後2時。
私はじっと玄関に近い食堂で待っていた。
ガチャ
ドアが開き「おかえりなさい!」と出迎えた
するとそこには
「あぁ、赫坂か。久しいね」
10年前と、全く同じ長さの髪の毛の災藤さんが立っていた。
「…さい、と…う……さん…」
「いざ伸ばしてみると以前より伸ばすのが苦痛になってしまってね、邪魔になってしまったんだ。」
「………」
嗚呼、
だから不安だったんだ。
きっと真面目な災藤さんのことだ、伸ばしているだろうと信じていた。
けれど、心のどこかでは、伸ばしていないんじゃないか、すぐに切ってしまっているんじゃないかと思っていた。
前者だと嬉しかったが、現実は甘くないらしい
「…そう、ですよね……はは、私、馬鹿みたい……
おかえりなさい、災藤さん。また特務室でよろしくお願い致します。」
泣きそうなのを堪えて自室に戻ろうと踵を返した。
こんな髪、早くに引きちぎってしまいたい。
早く切って、さっぱりしよう。
そう思って向かおうとしたら
「…少しやり過ぎてしまったね」
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ある人 | 作成日時:2021年1月15日 0時