佐疫＊夏祭り(4) ページ28
｢あー、なんだ、連れって彼氏さんかよー。｣
｢でもなんか弱そうだな｣
｢なー、あの女連れてっていいよな？なぁ！｣
男たちは佐疫を脅すように近づく。
彼らが手を出そうとしたその時
｢！？ぎゃああ！！｣
その手を止めて右手をありえない角度に曲げて、容易く折った。
｢おい！何すんだよ！｣
｢君たちも鬼だろう？そんなものすぐ治るさ｣
｢んだと…っ！！｣
｢俺の彼女に怪我をさせたんだ。本当なら再起不能にしたいところだけど俺は優しいからね。今すぐここを立ち去れば見逃してやる｣
｢ひっ…！｣
｢ﾁｯ…行くぞ！｣
男たちは去っていった。
｢A！遅くなってごめん！大丈夫！？｣
｢ご、ごめん、抵抗しようと思ったんだけど、力入らなくて…｣
｢…とりあえずあそこの石段座ろう。立てる？｣
｢うん……、っ｣
｢…どこか痛い？｣
｢足…ちょっと捻挫したっぽい｣
｢そっか…ちょっとごめんね｣
ふわっと、佐疫は私のことを抱き上げて石段まで連れてってくれた。
｢冷やすもの…が飴のついでに買ってきたジュースくらいしかないや。捻挫だし、少しでもマシになるように当てといて？｣
｢うん…ありがとう｣
｢それと靴擦れしてたんだね…気づかなくてごめん、絆創膏くらいなら持ってるからこれ貼っとこうか｣
そうして佐疫はペタっと絆創膏を貼る。
その時花火大会が始まった。
｢…本当に遅くなってごめんね｣
｢ううん、大丈夫だよ｣
｢…手、震えてる。｣
まだ少し恐怖心が残っているのだろうか。
……地獄の鬼が、情けない。
すると、佐疫がギュッと手を繋いでくれた
｢…花火見てたらきっと忘れるよ。｣
｢…うん。｣
佐疫が買ってきてくれたりんご飴を口に含み、花火を見上げる。
去年の最初は全然見えなかったけど、今年は本当によく見える
｢…綺麗…｣
｢うん…本当だね…｣
｢…A、去年の花火大会覚えてる？｣
｢うん、覚えてる、去年の花火最初全然見えなかった。｣
｢そうそう。Aぴょんぴょんしてて可愛かったなぁ｣
｢…お恥ずかしい｣
｢ふふ、その後俺が肩車したよね。｣
｢懐かしいね。その節はありがとう｣
｢どういたしまして。2人きりになれてすごく嬉しかったな、その前からAのことが好きだったから｣
｢えっ、そうなの？聞いてない｣
｢言ってないからね。今度いつから好きか教えてあげるよ｣
そんな会話をしてたらさっきのことはすっかり忘れていた。
…花火が終わった
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作者名：ある人 | 作成日時：2021年1月15日 0時
