或る言葉 ページ5
きたさとまださは、はたラクに呼ばれて博士の部屋へと通された。そして博士から、先程の話をされた。
博士「きたさ、まださ、お前たちの能力には目立った代償はない。代償というか、一般的な運動の疲れなら出るだろうがそれは誰しも同じじゃ」
きたさ「そ、そうか」
まださ「あのさ、博士、この世界には"死"の概念はないのか?"死"そのものとはあるのか?」
まださは、今まで気になっていたことを博士に聞いた。この世界の曲たちは不死身である、そういう言い伝えがほとんどなのだ。曲が死んだところは確かに見たことがない。
"死"そのものがこの世界にとって失われた運命なのではないか、ともまださは思っていた。
博士「…………この世界に、死は、ある」
博士はまた思いもよらないことを言った。
きたさ「それは本当ですか…………」
博士「あぁ。我々曲の種族はある程度体が成長したらそこで見た目の成長は止まる。ウェルのように幼いままで成長が止まる者もいれば、幽玄のように若き男のままで成長が止まる者もいる。勿論、小生のように少し老けた爺のようになる者もいる。」
まださ「老いによる死はないってことだな」
博士「そうじゃ。だが、再起不能になるまで能力で体を消耗させたり、首を切る、頭を粉々に破壊されるなどされると、生命の存続が厳しくなる。医療や、治癒系の能力を以てしても回復ができなかった場合、それが、この世界における″死″、ということになるのじゃ」
きたさ「老いではなく、戦闘による死ということですね?病気で死ぬことはないんでしょう?」
博士「ほとんどが戦闘による死じゃな。一方で、病気で死ぬことはめったに無い。そもそも病気になりにくい我々の体質もあるのかもしれない。まぁ、かなり昔、インフルエンザと称された疫病を別世界から持ち込んだ阿呆がいたらしく、それは大流行して曲たちをおおいに苦しめたんじゃがな。後から分かったがインフルエンザとは地球の疫病らしいな…………全く、あんなとんでもない疫病と毎年戦う人間どもも、どうかしておる」
その言葉にきたさもまださも、あぁ、と頷くしかない。インフルエンザは地球の毎年の課題であり脅威だ。予防接種なんてものもしなければならないときがある。
博士「……………だからこそ、悪人がいつまでたってもいなくならないんじゃ」
博士の押し出すようなその台詞には、全員黙り込むしかなかった。
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作者名:キテレツ | 作成日時:2019年2月10日 14時