家族は甘え、4 ページ33
季曲は無心で刀を振るっているに過ぎなかった。可愛そうなことに目の前の人物を「きたさいたま」と「まださいたま」ということを認識する力がもうなかった。
季曲のなかでは、目の前の二人は情報通り、「敵」として「インプット」されているだけであり、それが「誰」かまでは季曲本人では考える必要がないというように「設定」されていた。
まださ「敵なら誰でも斬って良いってのはまぁまぁ当たってるけどよ、恩を仇で返すのはちとまずいぜ。それが俺たちに向けてならまだ事情を知ってるからなんとかなるだけだ」
まださの季曲に切られた左腕から宝石が突き出してきた。まださはぎょっとする。
まださ「こいつぁ無双の宝石版か…!?」
きたさ「腕ばっかり気を取られてると首まで切られるよこれ」
きたさとまださは少しの切り傷もバカにはできない。そこから宝石が生まれ、段々と身体が言うことを聞かなくなってくるのだ。身体が宝石になるような感覚、金縛りのようなもの。
もう季曲の説得は諦めた二人だったが、最終的にこれを止めるためには自分たちだけだと季曲の殺害しか方法がないと知っているため、余計に嫌な気分になっていた。
きたさ「まださ、半殺しって無理かな」
まださ「ごめん俺には生か死しか与えられねぇ」
きたさ「酷い」
まださ「ごめん」
でもその心意気でいかないとこちらが殺されてしまうんだよなぁと。
その瞬間、オレンジの大型の獣が、いや、化け物が、きたさとまださ、季曲の間に割って入った。
「ヴヴヴッ………」
化け物は苦しそうに唸り声をあげ、3人を威嚇する。よく見ると化け物はなにかに例えるなら狼のような見た目だった。でも所々機械で抑えているところもあれば、角も生えているし、翼らしきものもある。なんでもありの狼のような化け物、が言い換えとして正しそうだった。
季曲「………!?」
きたさ「待て待て待て、敵か？なんかやばそうなやつじゃん」
あまりに突然の化け物の登場に季曲もびっくり。刀を落とすほどだった。
そのまま化け物は季曲に突進し、前足の爪で季曲を引き裂いた。刀ごと真っ二つになった季曲は肉片に………なるかと思いきや全て宝石になりその場にごとりと落ちた。
きたさ「えぇ…………」
きたさは宝石片となった季曲とそれを更に切り刻む化け物を見て初めて怖じ気付いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キテレツ | 作成日時：2018年3月8日 9時
