だいたい君の優しさのせい【fkr×kwmr】 ページ17
サブチャンのトマトのやつ(伝われ)
「福良…」
「…」
「…、あの、ふくら」
斜め下を見つめては時々もどかしそうにため息をつく福良と、銀のコップと、フルーツグラノーラの大きな袋。
言いたいことはたくさんあるのに、それを上手く表現する言葉が見つからなかった。
「、怒ってたり、する…?」
ああ、ダメだ。僕はどうしてもこいつの弱った姿を直視できない。
彼が今は正面ではなく隣にいるのをいいことに、ふっと目をそらす。
「…ううん、全く」
嘘なんていらない。無理だけはしてほしくなかった。どうしても。
「ごめん、ね、福良、僕、何も考えてなかったから。そんなに苦しそうにするなんて、想像すらできてなかったから……」
「謝らなくていいよ、河村は、全然…」
福良はそう言うけれど、確実に悪いのは自分の方なのだ。苦手なものを無理に食べさせた自分が。
「むしろありがたいくらい。俺、河村がいなかったら、絶対もっとダメになってたから」
「えっ…」
ゆっくりと顔を上げた福良の言葉に、驚きと戸惑いの混じった声が漏れた。
ダメになっていた。僕がいなかったら。一つ一つ反芻しても、何だか飲み込めない。
「全部河村のおかげなんだよ。カメラ回ってたからとかじゃなくて、ちゃんと河村が近くにいてくれたから。俺一人じゃ、何もできないんだよ」
訴えるような口調にハッとする。
「…福良はえらい」
とっさに出たのは陳腐すぎる一言。この際いくら陳腐だろうと関係がない。
「ちゃんと頑張ってる。苦手なトマト食べさせられて、カメラも回されて、でも最後まで食べきった福良はえらい。それなのに僕は、そんな福良に辛い思いをさせただけで、」
「やめてよ河村。そんなに自分を貶めないでよ。…確かに食べるときは辛かったけど、河村がいるのはすごく心強かったし、何なら嬉しかったよ。俺のためにあんなに時間割いてくれて」
そんな健気さを彼がこちらに見せるたび涙が溢れそうになって、声も出せなくなっていく。今一文字でも喋ったら、全て嗚咽になってしまう気がした。
「ねえ、ほら、河村がそんな顔してどうすんの!」
「うあっ」
一瞬の隙に福良の両腕が僕の身を包む。
「ふくら……、本当に、ほんとに、僕は……」
何もかもこらえきれそうになくて、静かに頬を伝う感情を、数分の間ただただ呪うことしかできなかった。
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みー(プロフ) - 完結、おめでとうございます。お話も、とても素敵でした。穏やかな感じがいいですね。良いお話をありがとうございました。 (2020年4月20日 8時) (レス) id: 62afb683b5 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫の乙(プロフ) - まままさん» こちらこそありがとうございました。文章を評価していただけるのは嬉しい限りです。今後も精進いたします。 (2020年2月21日 7時) (レス) id: 940764e3e6 (このIDを非表示/違反報告)
ままま(プロフ) - 素敵なお話に仕上げてくださりありがとうございました…!やはり作者さんの書かれる文章はなんというか…綺麗(?)で大好きなんですよね…。今後も楽しみにしています♪頑張ってくださいね!! (2020年2月20日 23時) (レス) id: 712424a70c (このIDを非表示/違反報告)
黒猫の乙(プロフ) - おとーふさん» ありがとうございます。最近文章があまり書けず、ご期待に上手く応えられないのが心苦しいのですが、リクエストありがとうございました。 (2020年2月17日 16時) (レス) id: 940764e3e6 (このIDを非表示/違反報告)
おとーふ(プロフ) - リア王のお話、ありがとうございました!読んでて、すごく面白かったです。またリクエストの機会がありましたら、リクエストしようと思います!これからも頑張って下さい! (2020年2月17日 7時) (レス) id: 8a65243c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒猫の乙 | 作成日時:2020年2月4日 21時