浮気されてるので浮気しました。[HQ]

01*国見ちゃんと呼ばれる子 ページ2

漣(さざなみ)Aは焦っていた。


彼氏の浮気現場をいつもの様に携帯で撮影していると後ろには、男子バレー部の1年生が立っていたからだ。


確か…国見ちゃんと呼ばれていた子。


近くで見ると彼氏の及川さんくらいの上背があり大きいものの、身体付きはまだ薄くて少年のそれだ。


｢…証拠集め中？
集めなくても及川さんが浮気してるのなんて皆知ってると思いますよ。
バレてないって思ってるのは本人くらいで。｣


｢証拠…って言うか念の為撮ってるの。｣


｢別れないんですか？｣


｢…どうしたらいいと思う？
浮気はされてるけど…及川さんの言葉が全部嘘だとは思いたくなくて。」


｢俺に聞かれても。
…なら、俺と浮気してみますか？
漣先輩の顔好きなんで俺は役得です。｣



淡々と言い、散々操作していたスマホをポケットに入れて私を見下ろしてくる。
…雰囲気のせいか少し怖いと思う子。

自分が浮気をするって発想が無かったから少し考え込んでしまう。



｢浮気されてどんな気持ちですか？｣



嬉しい訳も楽しい訳もない。
寧ろ自分の存在意義が分からなくなる。

他の子が良いなら振ってほしい。
自分から及川さんに｢別れたい｣とは言えないのが悔しい所。


もう一度見上げた顔に怖さなんてなく、慈しむように優しい目を向けられるから少し、泣きたくなった。



｢俺は漣先輩が不憫で仕方無いから助けたいだけです。
同じ気持ちを及川さんが知れば、きっとその先は先輩の事だけを大切にするようになりますよ。」


｢同じ部活で気まずくなるんじゃない…？｣


｢浮気の相手も中学の後輩で気心も知れてる俺なんで、後からドッキリでした。でも言えば及川さんは許してくれます。｣

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