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クラッシュドアイスをコップに適量入れて、ロゼワインとオレンジを注ぐ。
透き通ったワインクーラーの中のクラッシュドアイスが、光を浴びて宝石のように輝いた。
このカクテルに添える言葉は、「私を射止めて」。
フラクタルで働き出す前、個人的に好きで併せて勉強していた、所謂カクテル言葉。
それについて御客さんと話すのも、それでてっちゃんを弄るのも、面白い。
不意に留まった視線の先には、橙色の秋桜。
花言葉、なんて高度な物は求めていないけれど。
興味が湧いて液晶画面を叩けば、とあるサイトが目に入った。
「黄花秋桜....絢爛。」
絢爛。きらびやかで美しい様。華やかで美しい様。
考えているんだか、いないんだか。
一つだけ拝借してさっと水洗いした後、ワインクーラーにそっと浮かべる。
「はい、てっちゃん。」
「花束、受け取ってくれたやん。」
「そのお礼。」
「なんて言うお酒?」
「ワインクーラー。カクテルだよ。」
フルーティーで夏に飲みたくなるようなカクテルをチョイス。
添えた言葉は悪戯心で。
「馬鹿美味い、飲み易っ....!」
クラッシュドアイスみたいに目を輝かせる彼は矢張り可愛くて、思わず笑みが溢れた。
「そう言えばさ。」
彼の声に「ん」と顔を向ける。
「俺さ、美人な女をデートに誘うから花束くれって頼んだんよ。」
「うん?」
「そしたら、花言葉が絢爛っつーキバナ、コスモス?を選んでくれて。」
「....ほう。」
「これもさ、そういう意味あるん?」
少し焦って目を逸らす。
調子に乗るもんじゃないな。
「えー、っと。」
「もしかして、俺にさ。」
「いや、深い意味は。」
「絢爛、って言いたいわけ?てっちゃん美しい!って事?」
彼が指していたのは如何やらカクテルの上に悠々と浮かぶ秋桜の事だったようで、ほっと胸を撫で下ろす。
「馬鹿。そんなんじゃない、花束受け取りましたよの証。」
「ちぇー、何だ。」
悪戯は暫くやめにしよう。
そんな事を誓って、今日も夜が更けていく。
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作者名:或 | 作成日時:2020年5月8日 7時