騎士は姫を従わせたい (ページ2)

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◾️第壱話：神楽坂入隊ページ2

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第8特殊消防官隊管轄地区である【神田】で〝焔ビト〟が発生という連絡が入り警報が教会内で鳴り響く。隊員たちは青い発行体のある防火服を素早く着用した後、特殊装甲消防車(マッチボックス)に乗り込み現場へ急行する。

火災現場は中高一貫校で焔ビト化したのは若い男性教師だ。日頃の火災訓練のお陰で逃げ遅れた教師・生徒はいないと一般消防官から報せがきた。現場を把握しているということは消火作業が開始されている証拠。悪いことではないが、水蒸気の煙幕で視界が狭くなるので鎮魂に支障をきたす可能性があるのだ。

一般消防士の話によると焔ビトがいるのは出火元でもある校舎三階の理科実験室。放浪する訳でもなく同じ場所に居座っているので、火災の規模は最小限に抑えられているという。

大隊長を務める秋樽桜備が2日前に配属された新人の第三世代消防官である森羅日下部に自身の発火能力を使って出火元に向かうように命じた。焔ビトの鎮魂に時間を掛けないようにするための判断である。

森羅が敬礼で返事をしたあと桜備の掛け声で第8特殊消防隊は火災現場に突入した。

「───娑伽羅(シャカラ)！！」

否、突入しようとしたと言う方が正しい。

気付いた時には、紅い炎を纏う「蛇」が校舎に突撃していた。瓦礫と硝子の破片が飛び散り、轟音と炎の煙幕で視界は瞬く間に閉ざされる。消防隊の規則には〝焔ビトの鎮魂は素早く的確に、建物の被害は最小限に〟という言葉があるのに対し、今の現状は最悪と言える。

「喰い殺せ。私の鎮魂の前にシスターの祈りなど不要だ」

炎の煙幕が収まり視界に光が差したのも束の間、蛇が焔ビトを咥えて二つに引き裂いた。コアが破壊された焔ビトは炎炎ノ炎二帰せ、灰と化し消滅した。

「──お前、は……」

森羅の呟きは空気中に溶けてなくなる。背景が凄まじい勢いで燃える校舎のせいか、本来なら紺青色だが深紅に映る美しい髪を風に靡かせた少女に先程の紅い蛇を彷彿とさせた。