第二十一話(??side) ページ22
。
「もう、まったくあの娘は」
走り去っていく娘の後ろ姿を見ながら深い溜息をはく。
あの子は、最近変わった。贅沢をしなくなった、侍女たちに気を遣うようになった、わがままを言わなくなった。これはもう変わったなんてものじゃない。
“別人”になったのだ。
前の姫様のルフはとても濁っていて、見ていていい気分ではなかった。綺麗に輝くルフで満ちているこの国ではあの母娘のルフはとても目立っていて、近くにいるとすぐに分った。その濁ったルフがこの宮殿の中を舞っているのは不愉快でしかなかった。でも、今は、汚くなんてない。むしろ……
とても、綺麗だった。
見たことのないくらい綺麗なルフ。周りのルフに劣らないくらい、いや、周りのルフなんか目じゃないくらい、ひときわ綺麗なルフ。私の敬愛するシンドバッド王のルフとはまた違う、とても優しい輝きだ。あの娘が、そんなはずないと現実逃避したくなるくらいに、そのルフは美しかった。
この変化を一番初めに気付いたのは他でもない私だろう。王はあの娘に目をやろうともしていないだろうから。私もそうだった。
あんな娘、大嫌いだった。
いつからだろう、なんなに綺麗なルフが見えるようになったのは。
そんなのは考えたって分からない。王の眩いルフがこの国には満ちているのだから、その中に同じくらいの輝きの違う人物のルフが混じっていても誰も気付かない、…この私以外は。
私だけが気付いた。王ですら先入観に囚われ憎悪で見失っていたものを、私だけが…。
そのことについて一番初めに話したのはシャルだった。時々、あの子の事が話題に出て嫌悪感を顔全面に浮かべながらあの子の陰口を言っていた時だった。
先程の彼女の絶望に染まっていた顔が脳裏にちらついた。しかしあれは彼女の自業自得で産んだ絶望だ。それについて彼女を憐れむ道理はない。けれど、けれど…
あの子のルフに魅せられてしまった。
ルフの輝きは、大概はその者の内面を表すものなのだ。
もうこれ以上あの子を嫌いになれそうにない。
あの子のことなんて、大っ嫌いだったはずなのに。
(今からでもまだ間に合うかしら)
(お願い)
(どうか貴方の世界に私を入れて)
あの子の涙が頭から離れないの。
。
29人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
HARU(プロフ) - 音宮あおいさん» コメント有難うございます!最近忙しくてお話のほうも不完全燃焼が多くなって手抜き感がじわじわと広がっていくと思いますが、これからもよろしくお願いします(*´ω`*) (2015年10月4日 17時) (レス) id: 1ddf4d0ed1 (このIDを非表示/違反報告)
HARU(プロフ) - リンさん» はい頑張ります!!第二部のほうもちびちびやっていきますので、これからもよろしくお願いします(*´ω`*) (2015年10月4日 17時) (レス) id: 1ddf4d0ed1 (このIDを非表示/違反報告)
音宮あおい(プロフ) - はじめまして。さくらちゃんの本音がリアル過ぎて泣けてくるし、そんなさくらちゃんの心の支えになってくれてるケロちゃんが可愛すぎます!更新頑張ってください! (2015年10月1日 19時) (レス) id: e83c49882d (このIDを非表示/違反報告)
リン(プロフ) - ずっと更新待ってました!続きがきになります!更新頑張って下さい!楽しみにしてます(*´ω`*) (2015年9月24日 23時) (レス) id: 3f318786d5 (このIDを非表示/違反報告)
HARU(プロフ) - 刹那さん» 私の小説を面白いと言ってくださる方がいるなんて…!歓喜極まります(*´ω`*)読者様のおかげで第一部完結することができました!レス遅くなってすいませんです…。 (2015年9月20日 20時) (レス) id: 1ddf4d0ed1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:HARU | 作者ホームページ:http://artemis
作成日時:2014年4月4日 3時