20 ページ20
・
「え?」
「なんか、あの美容師さんが、こっちのが似合うよって。似合うよって言ったから、じゃあこっちでお願いしますって言ったから。そのなんかたまたまっていうか?あ、の、そのあんま髪色とかにこだわりないし、菊池くんと一緒にたまたまなったっていうか似合ったっていうか。」
「ざんねーん。俺、ハニーブラウンにしちゃった。」
そう言いながら私のチョコブラウンを触る。
「だから一緒じゃなくなっちゃった。」
「あ、うん。別にいいんだけど。」
「俺もさ、なんかもうちょっと明るい色にしたいなーと思ってて、Aの色いいなーってハニーブラウンにしてもらったの。一緒になっちゃうけどいっか、と思ったけど一緒にならなかったね?」
「ごめん。」
「いいよ。交換だね、髪色。偶然。」
「うん。」
もう一度自分の髪の毛を触ろうとして、指先が自分の唇に触れた。
制服で色付きリップを塗るのは好きじゃなかったけど、菊池くんに塗ったほうがいいいと言われてかた塗るようになったリップ。
今日はまだ塗っていなかったみたい。指先に触れたのはカサカサの唇だったから。
ポーチからオレンジ系の色付きリップを取り出して、塗ろうとする
「赤のが、かわいいよ。その髪だったら。」
「え?」
「って美容師さんが言ってた。」
なんで美容師さんとそんな会話になったのかはわからないが、私のポーチの中から赤系の色付きリップを探し当ててキャップを取る。
オレンジ系、ピンク系、赤系と3色そろえていてよかったと思う。
「こっち向いて。」
私が菊池くんの方へ顔を向けると、菊池くんは慣れた手つきで私の唇に色をつけた。
「はい。OK。」
リップをポーチに戻しながら
「鏡出すのめんどくさいもんね。」
いつものセリフを言う。
私はいつも、鏡なんか見なくてもリップ塗れるよ。の一言が言えない。…いや、言わない。
「おはよー。うへーすっずしー。」
「外マジで溶けるかと思った。」
一人、二人と教室内の人口が増えていく。
クーラーで涼しくした教室は、そんな一人二人の体温じゃ室温は上昇しない。
だけど、私の頬、そして体は、なんだか暖かくなってきた気がした。
568人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:日向(ひなた) | 作成日時:2018年8月8日 19時