18 ページ18
・
中間テストはそんな菊池くんのお陰で
祝・初赤点
とならずにすんだ。
平均点より3点上の数学のテストを見つめる私の横で、満点のテストを広げる菊池くん。
「菊池くん、塾講師のバイトとかしたほうがいいんじゃないの?」
「高校生なんか雇ってくれるところないよ。あと、Aが飲み込み早いだけだから他の人じゃダメ。」
「そんな謙遜しなくても。」
「それに…あんまり人と話すの得意じゃないから。」
「…。」
余計なお世話だった。それ以上でも以下でもなんでもない。
すこしだけムスッとしているように見える菊池くんの横顔を確認して、
私は間違えた問題を解き直す。
案の定
やっぱり私の頭じゃその問題を解くには足りなくて、すぐに手が止まった。
菊池くんは「やっぱりね。」という顔をして「まってました。」と言わんばかりに身を乗り出してきた。
「これ、俺と一緒に解いたじゃん。」
「すいません。」
「別に責めてないよ。一回解けたから、またゆっくり考えればちゃんと解けるってこと。」
今の状況を見てここが県内でも屈指の進学校だと思うだろうか??という賑やかさの中
静かに数学の解きなおしをする私と菊池くんがいる場所だけ違う時間が流れれいるかのよう。
菊池くんは嫌な顔をせずにまた1から丁寧に教えてくれる。
「あ、待って思い出した。」
菊池くんの解説を途中まで聞いた私は、やっと解き方を思い出してすらすらと説いてみせた。
「正解。」
持っていた黒のシャーペンで丸をつけてくれた菊池くん。
「惜しかったね。」
そう言って笑った。
「そいえばさ…」
「何?」
「Aってなんかバイトしてたっけ?」
「あ、えっと…。」
さっきの余計なお世話すぎる私の発言を思い出して言葉に詰まる。
「言いたくないならいいんだけど。」
「いや、普通になんか、近所の結婚式場の事務。」
「結婚式場??」
「うん。なんか、わりとパソコンとか得意だし、その、、事務なら接客とかもないし、それに、」
「それに??」
「愛とか恋とかよくわかんないから、それが集まる場所で何か探したいのかもしれない。」
568人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:日向(ひなた) | 作成日時:2018年8月8日 19時