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その後も保健の授業はときどき教頭の惚気話が組み込まれながら進んだ。
体調が悪くなりそうな私を、菊池が「大丈夫。根拠はないけど大丈夫。」
と言いながら背中をさすってくれていたおかげか
なんとか1時間目を生き延びた。
わたしには、生き延びたと言わなくてはいけないことくらい重大な問題だった。
生きてく上でどうにかしないといけない問題だ。
菊池くんは保健の教科書をしまいながら
「Aこっち向いて。」
と言うから向いた。
「やっぱり…色付きリップ塗った方がいいよ。」
「…わかった。」
また顔が青白くなっていたんだろう
相変わらず学校へはノーメイクで来ているから。
ポーチからリップを出してリップのキャップを取ろうとするけれど
「あれ?」
その小さな力さえも入らず
「貸して。」
菊池くんが私の手からリップを取って蓋を開けた。
前にもこんなことがあった
ペットボトルのキャップが開かなかった時
もはやわたしは菊池くんに介護されていると言っても過言ではないかもしれない。
力の弱いアピールをする女は嫌いだけど、今の私は本当に力が入らない。
「ありが…え。」
菊池くんからリップを貰おうとしたら
菊池くんがそのままリップを持ったまま、わたしの唇に色をつけた。
「あの…。」
「鏡出すのめんどいじゃん。」
サラっと言った菊池くん
「ん。だいぶ良くなった。なんか顔色も良くなったね。」
顔色が良くなったのは、
頬が熱を持ってきたせいもあるかもしれない。
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作者名:日向(ひなた) | 作成日時:2018年8月8日 19時