【アレスの天秤】②伊那国島の“奇跡”と呼ばれた天才少女 (ページ8)

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『っ…』

　ナミはきゅっ、と片手を握る
「は？」と反応する灰崎から顔を逸らした

「君はあの帝国も木戸川清修も、星章も、糸も簡単に崩せるだろう。君ひとりの力だけで」

　
　野坂の視線がナミを突き刺す
　ナミは一歩後ろに下がった
　そんなナミに近寄る野坂
　手を差し伸べる

「もし王帝月ノ宮にくれば、君が満足するサッカーを実現させることができる」

　野坂の手のひらがナミの顔の前までやってきた

「どうだい？手を組んでみないかい？」

　野坂はフッと笑った
　ナミの目が揺らぐ
　首をふりふりと横にふった

「そんな拒まなくたっていい。君の本能は…きっともっと強くて素晴らしいサッカーを望んでいるはずだ」

　野坂はじっ、とナミをとらえた
　そんな野坂の手を灰崎がバシッと払う

「ふざけんじゃねェ！嫌がってんだろうが！王帝月ノ宮はここまでする輩なのかよ！！」

　灰崎は怒鳴った
　野坂は口角を上げたまま「ごめんね」とナミに言い、そこから去って行った「返事はまた今度にでも聞かせてよ」

『…』

　ナミは視線を下げた
　灰崎はそんなナミを見つめる

「お前…王帝月ノ宮に入るわけねェよな…？」

　小声でそう呟く灰崎
　ナミはすぐに頷いた

「ならいいんだ」

　灰崎はそのまま去って行った

「ねぇ、ナミ」

　明日人はナミに問う

「雷門でのサッカーは楽しくない？」

『っ』

　明日人は寂しそうに聞いた
　ナミは明日人をぎゅっ、と抱きしめる

『たのしい、よ。すっ、ごく』

　嘘じゃない
　ナミは本当に雷門でのサッカーが好きだった。島のみんなとやるサッカーが

「そうだよね…」

　すると、
　今回の星章学園の相手選手が、インフルエンザで全員出られないという驚きの放送が入った「ええ！？全員が！？

「あっ、キャプテンから連絡が…え？最終戦の相手がカンニングがバレて棄権！？それじゃあ俺たちはーーーー」

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