宇宙の誕生 ページ16
｢おかえりー！｣
人2とはるかは車から降り、玄関へと歩き出す。
車の音が聞こえていたのか、ほたるが2人を迎えた。
｢｢ただいま、ほたる｣｣
あの日からほたるは著しく成長していた。
｢おかえりなさい｣
｢ただいま。みちる、せつな｣
｢はるかパパ、人2ママ。
ほたるね、みちるママとせつなママとお勉強してたよ｣
｢そう、ほたるはお利口ね｣
｢今日は何を勉強したんだい？｣
｢えっとね、“月日は百代の過客にして、
行き交ふ年もまた旅人なり”ってやつ。｣
｢へぇ〜｣ ｢ほたるはすごいね！｣
｢うん！｣
はるかと人2に褒められ嬉しそうに微笑むほたる。
ほたるの前を蝶が横切ると子どもらしく蝶を追いかけていく。
｢あ、ちょうちょ！まってー！｣
その姿を人2は優しい眼差しで見守っている。
｢可愛いね‥｣
｢あぁ‥。あの時からほたるは、
恐ろしい程のスピードで成長し始めた…｣
｢朝起きるたびにどんどん成長しているわ｣
｢体だけではありません。知能の発達も驚異的です。
今では、一般相対性理論も理解し、
イェーツの詩も暗唱しています｣
｢‥のようだね｣
｢私は‥‥ほたるには、普通の子として大きくなって、
一生を送ってほしいと思ってた‥。
また、同じ様に悲しむ姿は見たくないのに‥｣
｢人2‥｣
はるかは俯く人2の肩を抱き寄せる。
｢ほたるは？｣
｢え？｣
先程まで蝶を追いかけ、垣根の近くで遊んでいたはずの
ほたるの姿がないことにみちるが気付く。
｢先に家に入ったんじゃ？｣
｢探しましょう！｣
4人は頷き合い、家の中で扉を開けて探し出す。
｢いたか？｣
｢いいえ‥｣ ｢いないわ‥｣ ｢こっちもダメ‥｣
｢後はここだけか‥｣
1つの扉の前で4人は目を合わせ扉を開ける。
そこには背を向けてはいるがほたるの姿があった。
とりあえず見つけられたことに安堵するのも束の間。
ほたるの掌から円形の光が現れる。
｢なに？｣
｢ビックバン‥宇宙の誕生です。
過去からの出来事を高速でシュミレートしているんです｣
｢いつの間にこんな能力を‥｣
｢とにかく、様子を見よう｣
｢えぇ‥｣
真っ暗だった宇宙。
そこに太陽が生まれ、その周りに月や地球、
内部太陽系の星、外部太陽系の星たちが出来ていく。
｢太陽系です｣
｢どこまでも照らす太陽の光‥。
その周りに僕たちの星が生まれていく｣
｢強くて優しい光ね｣
｢あぁ、僕達のプリンセスの光だ‥｣
太陽系を照らす光。
すぐ隣にある温もりをはるかは抱き寄せる。
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作者名：歩 | 作成日時：2023年5月6日 4時
