山風ｸﾘﾆｯｸ７！ (ページ20)

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和「翔くん、ごめん。変わります；」

翔「あぁ、ごめん。なんか怖がってるみたいでさ；」

和「Aちゃん、ネブライザー嫌がって嘔吐したことあるくらいですからね；」

和也は昔のことを思い出し、まだ克服できてなかったかと小さくため息をついた。

和「Aちゃん、ほら。和くん来たからもう泣かないの、な？ほらおいで～。抱っこしてあげよう。」

和也はそばにあったベッドに腰掛けると、A自分にもたれかけさせ、後ろから抱きしめる形をとって体をさすってやった。

和「怖かったか、ん？お薬のにおいが嫌なんだよなぁ？」

『かずくぅ～ん泣』

和「よしよし、もう泣かないよ？大丈夫、大丈夫。ほら、落ち着こうね～。」

『ヒック、ヒック・・・涙』

和「ほら、深呼吸してみ？スー・・・ハー・・・」

『んっ、ふぇっ・・・はぁー・・・涙』

和「翔くんネブライザー取ってもらっていい？」

翔「あぁ、はい。」

和「Aちゃん、ほら、スーハーしたままだよ？」

『んっ、んっ！拒』

和「大丈夫、大丈夫。すーぐ楽になるからなぁ？モクモクさんに助けてもらおうなぁ。
おめめつぶって、スーハーしてたら終わっちゃうからね。撫」

さっきまで暴れていたAも、和也の声と温もりに安心したのか、和也の腕をギュッと握りしめたまま目を閉じて恐る恐る吸入を始めた。

和「えらいえらい、上手にできてるよ～。

翔くんごめん、終わるまでついてるから、次の患者さんもうちょっと待ってもらって？辛そうなら診察室のベッド使ってもらって構わないから。」

翔「う、うん。」

翔は見たことのない和也の優しく愛おしむような笑顔に驚きつつも、次の患者さんのところへと急いだ。

小さいころ、ネブライザーを嫌がるAに付き添っていたのは和也だった。

小さな体でイヤイヤと泣き叫ぶAを見るのは辛かったけど、俺に抱かれている間は不思議と大嫌いなネブライザーにも耐えてくれるAがとても愛おしくて。

いつの間にか、いつもAの診察に立ち会うようになった。
Aはきっとそんなこと覚えていないだろうけどね。

俺が医者になろうと思ったのは、父さんが医者だからじゃない。
Aが辛いとき、助けてあげられる人になるため。

だからさ？
もうこれからは、Aの担当は父さんじゃなくて俺に任せてよ、な？

Fin.