山風ｸﾘﾆｯｸ７！ (ページ19)

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和「Aちゃん、ずっと喉痛いの我慢してたろ。喉が真っ赤に腫れて化膿してる。
発熱もそれが原因だね。お薬だすから、頑張って飲もうな。」

『・・・ぅん。涙』

和「今、のどが乾燥してる感じある？」

『うん。ずっとそんな感じする。つば飲み込んでも痛いだけで何も変わらないの。』

診察が終わったと思い、安心しきった様子のAは、甘えるように和也に話し始めた。
しかし、この発言のせいでAはまた辛い思いをすることとなる。

和「じゃあ今日はネブライザーしとこう。それでだいぶ喉の乾燥感とか異物感もましになると思うから。翔くん、処置室にお願い。」

『えっ・・・』

和「大丈夫、翔くんがそばについててくれるからね。」

ネブライザーが苦手なことを知る和也は、Aに有無を言わせる隙を与えないまま翔に処置を頼んだ。
Aは目にいっぱい涙をため、翔に支えられるようにして診察室を後にした。

翔「Aちゃん、ネブライザーやったことある？」

あるもなにも、注射に匹敵するほど大嫌いな処置なのだ。
小さいころ、気管の弱かったAは、何度となくこの処置を受けてきた。

どうもこの薬のにおいが苦手で、嫌だ嫌だと泣き叫ぶあまり、薬のにおいで気分が悪くなっていることも相まって嘔吐してしまったほどだ。

そんな記憶が蘇り、どうにかしてこの処置だけはやりたくないと、もう目尻からは涙があふれていた。

翔「どうしたぁ？吸入はなんにも怖くないよ？痛いこともないし、ここに座ってゆっくり深呼吸してたらあという間に終わっちゃう、ね？」

『いやっ・・・』

怯えた目で嫌だと訴えるAに困りながらも、そっとネブライザーをAの顔に近づける翔。
パニックになったAは、翔の手を払いのけ、首を左右に振ってイヤイヤと本格的に泣き始めてしまった。

翔「Aちゃん、落ち着いて？ほら、大丈夫。ゆっくりお薬吸ってごらん？」

『やだーっ！・・・うっΣ』

久しぶりに鼻をかすめる独特の薬のにおいに、あのときの記憶がフラッシュバックして気分が悪くなる。
何度もネブライザーを近づけようとする翔の手を振り払い、吸入できる状態ではなかった。

そんな２人の様子を知ってか知らずか、処置室にひょこっと顔を出した和也が「やっぱりか；」と小さく呟いて翔の肩を叩いた。