山風ｸﾘﾆｯｸ７！ (ページ15)

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母「ほら、病院着いたよ？いっておいで。ここに保険証とお金入ってるから。」

『いいってば。寝てたら治るっ！』

母「高校生にもなって何言ってんの。ほら、行くよ？」

昔から病院嫌いのAを相手している母親は、嫌がるAを車から引っ張り出すと、いとも簡単にクリニックへと連行した。

母「すいません。先ほど連絡した牧野です。保険証と診察券、ここ置いときますね。それではよろしくお願いします。」

『え、あ、ちょっ！』

母「ごめんね、時間ないの。ちゃんと診てもらって、薬飲んで寝てるのよ？じゃあね！」

Aは腕時計を気にしながら慌ててクリニックを飛び出していった母親の背中を呆然と見つめることしかできなかった。

受付「こちら問診票になりますので、記入してお待ちください。あと検温もお願いします。」

『あっ、はい・・・』

手渡された問診票と体温計を受け取ると、診察室から一番離れたソファーに腰掛ける。
母親とのバトルで忘れかけていた喉の痛みと発熱によるだるさが一気に押し寄せ、問診票を書くどころではなくなり、そのままソファーに身を預けて目を閉じた。

翔「・・・さーん。・・・牧野Aさーん。」

『・・・んっ；』

しばらくぼーっとしたまま顔を上げ、自分が今病院にいることを思い出したA。
だんだんはっきりしてきた意識と同時に、診察室から名前が呼ばれていることに気づいたが、恐怖心と倦怠感でその場から動くことができなかった。

すると、先ほどまで名前を呼んでいた看護師さんらしき男の人が、受付の人と短く会話を交わしたと思うと、迷いもなくAの方に笑顔で近づいてきた。

翔「牧野Aちゃん・・・かな？」

『あ、は、はぃ・・・』

翔「診察の順番、次なんだ。診察室行こうか。」

『あっ・・・えっと・・；』

私のことを中学生と勘違いしているのかと思うほど、子どもに接するような口調と笑顔の看護師さん。
いつものおばちゃん看護師じゃないことへの戸惑いと、今から診察されるのだという恐怖心で、Aは翔から目を背け落ち着きなく目をキョロキョロさせた。

翔「ふふっ。大丈夫、心配ないよ？とっても優しい先生だからね^^」

わかってる。和くんがどれだけ優しいか。
はっきりと覚えてはいないけど、抱っこしてもらったり遊んでもらった優しい和くんの記憶は頭のすみっこにいい思い出として残ってる。