ep.6 ページ7
A side
落ち着いた様子を見せた翔ちゃんは、俺から身体を離して深呼吸をした。
「大丈夫？無理しなくていいんだよ」
「無理してないよ」
そう言って笑った表情は、いつもの翔ちゃんに戻っていた。
「ずっと考えてたんだ。俺の存在が、みんなの負担になっているんじゃないかって」
初めて悩みを打ち明けた翔ちゃんに、俺は優しく言葉を返す。
「なんでそんなこと思ったの？」
「みんなが優しすぎるから。俺のために時間割いてくれてるし」
俺は何も言わず、ただ翔ちゃんの話を聞く。
「それが逆に申し訳なくなってきて」
弱々しく微笑む翔ちゃんを見て、俺はゆっくりと口を開いた。
「俺は翔ちゃんにそばに居てほしい。他のみんなもそうだよ。心の拠り所が必要なんだ」
その心の拠り所が翔ちゃんだっただけであって、正直、自分の存在価値なんてどうでもいいと思っていた。
「ほら俺、さっき潤に言われただろ。『雅紀に嫉妬していた』って。自分でも見えていないくらい、俺は翔ちゃんのことを大切に思っているんだ」
俺の言葉に耳を傾け、時折薄ら涙を溜めながら、翔は必死に聞いている。
そんな姿が愛おしくて堪らないと思いながら、俺は話を続けた。
「俺は翔ちゃんがいないと生きていけないよ。それに潤だけじゃない。きっとみんな、そう思ってる」
だからこそ、俺に依存してほしい。俺なしじゃ生きられないほどに、もっと名前を呼んでほしい。そう言葉にして伝えたいくらい、俺の頭の中は翔ちゃんのことでいっぱいだった。
「俺は一生、翔ちゃんのことを守っていくから」
これが俺の考え出した、翔ちゃんを堕とす最善の方法である。
「…ありがとう、雅紀」
少し間を置いて、翔ちゃんはそう返事をした。
俺にできることは、翔ちゃんがまた壊れないように繋ぎとめていくだけだ。
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作者名：美詩 | 作成日時：2017年2月7日 13時
