不器用さんの恋のゆくえ。 (ページ43)

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重岡side

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『神山くん、どういうつもりなんすか』

『どういうつもりって？』

こんな時まで冷静な顔をしてる神山くんの顔を見ていると、思わず胸ぐらを掴む手に力が入った。

『分かってたはずですよね？Aが神山くんを好きやってこと！』

神山くんは何も言わない。

『何とか言ってくださいよ！分かってたんですよね？』

『当たり前やろ！俺やってAが好きやから！』

俺の声を遮るように、神山くんが俺の目を見てそう言った。

『......じゃあ、余計に何でなんすか？なんであの人からキスされた時、拒まなかったんですか？』

『俺には好きな人がおるからって！』

『俺には......俺にはそんなことはできひんかったんや』

『何でなんですか！』

『臆病者やからや！』

誰もいない静かな廊下にその声だけが響き渡った。

神山くんはため息をひとつついて、静かに話し出した。

『....俺はずっとAが好きやった。ほんでAも俺に好意があるんやろうなとは思ってた』

『やけどそれが兄を慕う妹的な好意なのか、男としての好意なのかが分からんかったし、それを聞く勇気も無かった』

神山くんが少し、呆れたように笑った。

『しげ、お前が尊敬する先輩はこんな臆病者やねん。ガッカリしたやろ？』

『...................』

俺は何も言えなかった。

どれくらいの時間が経っただろうか。

いや、実際はそんなに経っていないかもしれない。

やけど、それはすごく長い時間に感じられた。

その間も俺は胸ぐらを掴む腕を緩めることはできなかった。

『......ガッカリしました』

『やけど、しげ。お前も同じような所あるんちゃうか？』

『え？』

『しげやってAが好きなんやろ？お前はまだそれを認めてない』

思わず胸ぐらを掴む腕が緩んだ。

『しげも俺と一緒や。Aに対して臆病なところがな』

俺の腕から神山くんがするりと抜けた。

『ただ、今のしげの感じを見てるとまだ俺の方がマシかな。多分、そう言われた今でもお前はAが好きやってことを認める気はない』

『でも俺はAが好きなことは認めてるし自分でよく分かってる。もう1回ちゃんと自分に聞いてみろ』

そう言って、神山くんは行ってしまった。