不器用さんの恋のゆくえ。 (ページ42)

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重岡side

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「しげー、先にハケ美術室に戻しに行ってくるな」

『はいよー、後でペンキ持ってくわ』

そう会話をした数分後。

『あれ、まだハケ残ってるやん。しかも割とあるし。ほんまあいつ....』

俺はハケを持って美術室へ向かった。

＊

美術室へ着く寸前、Aは廊下の柱の後ろに隠れていた。

何してんねんほんま....

そう思いつつ前に視線を移した。

神山くんとその目の前にいるのは....

あ、あの人。

よく試合に来てて、神山くんとよう話してるから気になってた。

ここからでは少し離れていて、ふたりが何を話しているのかは分からない。

次の瞬間、女の人の方が近づいて神山くんにキスをした。

ガシャン！

大きな音が鳴ったのはAがハケの入ったトレイを落としたからだ。

その場から離れようとしたAの元へ駆け寄り、思わず腕を掴んだ。

『A！』

俺の方に顔を少し向けたAの顔は、既に涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「離してよ！」

その顔を見て、少し力を緩めてしまった俺の腕からAが逃げ出した。

『A！待てって！』

俺の声は届かない。

.....神山くん、どういうつもりやねん。

『神山くん！』

神山くんの元へ急ぎ足で向かい、気づくと胸ぐらを掴んでいた。

女の人はそんな俺に驚き、制した。

“ちょっと、やめて....”

『うるさい！俺は神山くんと話があんねん。どっか行ってもらえません？』

“そんな、でも.....”

『大丈夫やから、山川さん。俺もふたりで話がしたい』

神山くんのその声を聞くと、"山川さん"と呼ばれた女の人は渋々帰っていった。