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美術室に着く直前、足を止めた。
それは、少し離れた所に神ちゃんと女の人がいたから。
そしてその女の人は、試合に行った時によく見るあの女の人。
美術室へ行くには、ふたりのいるそばを通らなければ行けない。
思わず、廊下の柱の後ろに隠れた。
多くの生徒が既に帰っているので、廊下では声がよく響く。
“神山くん。明日、文化祭やね”
『そうやな』
“お化け屋敷、成功するとええなあ”
『うん』
沈黙が訪れたが、神ちゃんがすぐにその沈黙を破った。
『....話はそれだけ?』
その時、突然女の人が神ちゃんの方へ一歩近づいた。
“神山くん”
“いつも神山くんの試合見に行ってたのに気づけへんの?”
“私は神山くんが好き”
...やっぱり、そうやったんや。
神ちゃん、なんて言うんやろ。
“神山くんは?私のことどう思ってる?”
『...俺は....』
次の瞬間、女の人の顔がふいに神ちゃんに近づきキスをした。
え?
これ、夢やんな.....?
悪い夢を見てるってことやんな......?
ガシャン!
その音に気づいた神ちゃんと女の人がこちらを向いた。
目の前の風景に呆然としていた私の手から、ハケの入ったトレイが落ちたのだ。
『A.........!』
神ちゃんが私の名前を呼んだ時、私は思わず逃げ出した。
『A!』
いつの間に来たのだろう、私の後ろにいたしげが私の腕を掴んだ。
「離してよ!」
しげが掴んだ腕を引き離して、私は走った。
走っている間も流れ続ける涙。
何で.....何でこんな泣いてるん?
どこかでは分かってたことやん。
神ちゃんが私のことなんか妹にしか思ってないって。
なのに、なんで?
なんでこんなに涙が止まれへんの?
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作者名:あさひ | 作成日時:2018年8月30日 18時