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『今日、ママチャリで来て良かったわ』
案外早く、しげは自転車に乗って帰ってきた。
私の目の前で急ブレーキをかける。
『ほら、後ろ乗れ』
「え、いけるよ」
『いけへんやろ！家までちょっとあるんやろ？裸足でこの道歩くんか？』
確かに裸足で歩いて帰るには少し遠い距離だし、何より慣れない下駄で歩いた分、足が既に痛いのに余計に痛くなってしまう。
『ほらほら、ええから乗れって』
「私、重いよ？」
『なんや、120キロくらいあるんか？』
「そんなあるわけないやろ」
冷めた目でそう言うと、しげはケタケタと笑った。
『そんな怒んなよ、冗談や！』
お言葉に甘えて、ママチャリの後ろに乗る。
『下駄貸して』
言われた通り下駄を渡すと、しげは前カゴに投げ入れた。
『よっしゃ帰るで！こっちで合ってる？』
「うん」
乗ったのはいいが、どこを掴んだらいいんやろ。
とりあえずTシャツの裾を少しだけ掴む。
『てか、結構あるやんけ。この道を裸足で歩こうとしてたんか？』
その時、しげがキュッと急ブレーキを少しかけた。
その反動で、しげに抱きつくような形になった。
『あっぶな、大丈夫か？』
「う、うん。大丈夫」
そう言って離れようとしたのをしげが制した。
『....また急ブレーキ踏むかもせんからこうしとけ』
一瞬戸惑ったが、私はそのままでいた。
男の人にこんな風に抱きついたことはない。
否が応でもドキドキしてしまう。
「ここ、私の家。着いたわ。ありがとね、助かった」
『いや、ええよ。...じゃあ、帰るわ』
「うん、バイバイ」
しげが角を曲がるまで見送ってから、家に入った。
玄関のドアを閉めた時、少し顔が熱いような気がした。
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作者名：あさひ | 作成日時：2018年8月30日 18時
