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「じゃあ、行ってきまーす」
ママに浴衣を着るのを手伝ってもらって、可愛く髪型やメイクもしてもらった。
神ちゃんがいないから、別に誰に見せるわけでもないのに、ママもやり始めたら楽しくなったみたいで、自分で言うのもなんやけど、結構いい感じ。
ああ、こんなん余計に神ちゃんに見て欲しかった!
そんなことを思いながら、慣れない下駄を履いて花火大会へ向かう。
花火大会の会場は河川敷。
今では結構珍しいやろうけど、私の住む所ではまだこういう風景が残っている。
河川敷に近づくにつれて、増えてくる人。
この花火大会に来るのは、小学生ぶりくらい?
その頃より人が増えているような気がする。
そんな大きいお祭りじゃないはずやけど、規模大きなったんかな。
そんなことを考えながら、もうすぐ河川敷に着くという時、信号に引っかかった。
周りには浴衣を着たカップルや家族連れが多く立っていて、みんな楽しそうに話をしている。
いいなあ、私も神ちゃんと来るはずやったのにな。
まあ今さらそんなことを思ってもしゃあないけど。
ふと隣を見ると、少し離れた所に私と同じようにひとりでいる男の人がいた。
あれ、あの人もひとりなんや。
あ、でもまあ彼女と河川敷で待ち合わせって感じかな。
その男の人を何気なく見ていると、こちらに顔を向けた。
やば、見てるの気づかれた?
....ん?ちょっと待って、見たことあるような...
『「あ」』
男の人と私はほぼ同時に声を出していた。
『Aやん』「しげやん」
何とそこに立っていたのはしげだった。
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作者名:あさひ | 作成日時:2018年8月30日 18時