不器用さんの恋のゆくえ。 (ページ26)

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「いったい！ちょっ...離して」

私の腕を強く掴み、どんどん進んでいく。

「聞いてる！？離してって！」

腕を引き離そうとするが、それ以上に掴む力が強すぎて抵抗できない。

どこに連れていく気なん？

ああ、絶対夏希心配してるよな。

私は何も言わず強い力で連れていくことと、何を言っても反応しないことに対してイライラが募っていった。

＊

ついさっきのことだった。

私は夏希がトイレから出てくるのを待っていた。

“こんな所で会うなんて、奇遇やね、A”

「ほ、ほんまやね。葛西くん」

葛西涼太。それが私の元カレの名前。

葛西くんはそっと微笑んだ。

嫌だ。私、この人といたくない。

鼓動が速くなり、冷や汗が背中をつたる感覚。

「ごめん、私急いでるから」

その場を立ち去ろうとした時、腕を掴まれた。

“なんで逃げるん？”

「逃げてなんかないよ。ほんまに急いでるんやって。やから離して」

“急いでないやろ？”

“だって今、トイレに行った友だちを待ってるんやろ？”

は？なんで知ってるの？

葛西くんの顔を見ると、相変わらず微笑んでいる。

「もしかして、私たちの後をつけてたん？」

“そんな言い方はやめようよ。せっかく会ったんやから挨拶したくて”

「も、もう挨拶はしたやん、やから行くな.....きゃあ！」

掴まれた腕を引き離そうとした時、強く握り直された。