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体育祭当日。
“赤組がんばれー！！！”
“もっといけー！！！”
雲ひとつない青空にみんなの声が響きわたる。
『俺、速かったやろ！』
次の種目の準備をしに行く途中、しげが自慢げにそう言った。
さっきの種目はクラブ対抗リレーで、しげはそのことについて言っている。
「うんうん、速かったねー」
『お前絶対見てなかったやろ』
「えー、見てたよ。ちゃんとこの目で」
とか言いつつ、私が見ていたのはもちろん神ちゃんだけ。
『その言い方は見てなかったな！
お前のことやからどうせ神山くんしか見てなかったんやろ？』
「どうせって何よ！」
そんな風に言い合いながら歩いていると、
前から"あいつ"が歩いてきた。
"あいつ"とはもちろん、私の元カレ。
すぐに目を逸らしたつもりだったが、一瞬だけ目が合ってしまった。
しまった、このままやとまた声掛けられるかも。
グッと握りしめた手のひらがどんどん汗ばんでくる。
あいつと私との距離がだんだんと近づいてくる。
ああ、もう嫌や。引き返したい。
すると、突然しげが私の肩に手を回した。
『なあA、体育祭終わったらラーメンでも食いに行く？』
「え、ちょっ、何よ急に」
『とりあえず何か言っとけ』
私だけに聞こえる声でそう囁いた。
「えっと....そうやね！ラーメン、いいね」
『どこのラーメン屋がいいかなあ』
あいつと私たちがすれ違った。
すれ違う時に一瞬見えたあいつの顔はどこかやるせないといったようだった。
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作者名：あさひ | 作成日時：2018年8月30日 18時
