不器用さんの恋のゆくえ。 (ページ16)

今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:2,480 hit

（15）ページ16

神山side

.

スクールバッグに付けられた赤いお守り。

あれは確か......

泣いていた女子が少し顔を上げた。

『........！.........A............？』

泣いていた女子はAだった。

確かしげとAは同じクラスやったはず。

それにしても、Aは何で泣いてるんや？

何だか複雑な気持ちになった。

胸の奥がズキンと痛むような、そんな感覚。

昔からAを慰めるのは俺の役目やった。

幼稚園で遊んでる時にコケた時も、

小学校で筆箱を隠された時も、

中学校で部活のことで悩んでいた時も、

いつだって俺がAを慰めてきた。

年々会う頻度が減っても変わらんかった。

確かに昔からの知り合いやからっていうこともあるけど、それだけじゃない。

俺は、Aが好きや。

Aには打ち明けたことはない。

Aも俺のことは好きなように見えるけど、

それがお兄ちゃんを慕うような感じとしてなのか、

男としてなのかは分からない。

それに告白したとして、もしもAは俺のことを男として見ていなければ？

この関係が壊れるとしたら？

臆病者の俺は、未だに何も出来ずにいる。

目の奥が熱くなるのを感じて、慌てて空を見上げた。

『はあ...........くそっ』

俺は複雑な気持ちを振り払うように、自転車に乗った。