Bittersweet (ページ9)

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上司の紫さん【M】ページ9

松本部長は真面目で近寄り難い人。

妥協は一切許さないし、厳しい人。

でもそんな部長もときたま笑顔を見せる。

その笑顔に最初は惚れてしまったのだろう。

もちろん全然好きなタイプじゃなかった。

だって怖いし、うまく話せないし。

でもこの前残業してる時、「遅い」
って怒られるのかと思ったら「お疲れ様」って笑顔で缶コーヒーをくれたのだ。

上司なんだからそんなの当たり前だ、誰にだってそうしてるんだって言い聞かせてた。

しかし、そのギャップに落ちない人なんているだろうか。

私もギャップの沼にハマった1人。

部長はモテるしきっと彼女なんて絶えずいるんだろう。

だから当たって砕けろ精神で、勢いで渡すことにした。

お昼休み、誰もいないオフィスに残って松本部長のデスクに近寄った。

案の定デスクにはチョコだらけ。

そりゃそうだ。

私も色んなチョコに自分のチョコを混ぜて置いた。

義理じゃない本命を。

手紙なんて何年振りに書いただろう。

色々考えながらデスクをそっと離れて自分のデスクに戻ろうとしたら真後ろに誰かがいてぶつかった。

「きゃっ、あ、すみま…、え！？」

急いで謝ったが後ろにいたのは、さっき全力で机に想いを置いた張本人だった。

『何してんの？』

「えっ、えっと…」

部長はニヤニヤしながら話しかけてくる。

『もしかしてそこに置いた？？』

ドサっと山盛りのチョコがあるデスクを指差す。

「えっと、は、はい、では失礼しますっ」

もうパニックでどうしたらいいか分からずとりあえずその場を去ろうと、意味のわからない言葉を残して歩き出そうとした。

しかし、

ガシッ

「っっ」

ポスン…

今ありえない状況にさらに頭が混乱する。

部長に抱きしめられていた。