Bittersweet (ページ1)

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幼馴染の黄さん【N】ページ1

「かずー」

『なに』

いつも通り和の部屋に入ってソファに座る。

鞄をぎゅっと握りしめながらも、いつも通りを装う。

「かず今日大学行ってないの？」

『おれ今日2限だけだったから』

「そうだったんだ～」

私と和は幼稚園の時からずっと一緒に過ごしてきた。

幼稚園から大学まで一緒なんて言ったら友達に付き合ってんじゃないの？とよく疑われるけど、まっっったくそんなことない。

まず私を"女"として見てないんだ、和は。

スマホゲームに夢中で目も合わない。

「ねぇ、その机に置いてるの今日もらったの？」

和はモテるから毎年たくさんチョコを貰って帰ってくる。

でも今日は一個しかそれらしきものがおいてなかった。

『ん？あぁ、それ母ちゃんからもらったチロルチョコな。Aも食っていいぞ』

「えっ、おばさんの？他は？？」

『無いよ』

「えっ、なんで…、あっ！ついに和もモテ期終わったのか～？？笑」

『今日2限までだったからすぐ帰ってきたの、お前めんどくせぇ』

くっそぉ…。

今日もお口が達者で…。

『Aのは？？今年もあるんだろ？くれ』

実は和はチョコが苦手(というか食べ過ぎて苦手)だから、私は毎年パウンドケーキを焼いて渡している。

今年ももちろんパウンドケーキを作って鞄の中に入れている。

いつも透明の適当な袋に入れてたけど、今年はちゃんとラッピングしている。

ちょっとでも和に気をもってほしくて…。

和のことが好きだという気持ちになったのはほんとについ最近だった。

大学生になってお互い授業の時間もバラバラで。

いつも一緒が一緒じゃ無くなった瞬間、和の存在の大きさを嫌でも体感した。

和が隣にいないと不安なんだ…。

もしかしたら和には恋人がいるかもしれない。

でも私は微かな希望を抱いて鞄からパウンドケーキを取り出す。

そして和がソファにもたれてる真横にぽんっと落とした。

「はいどうぞ」

いつもと違うラッピングだから和の反応が怖くて、ソファから立ち上がって部屋を出て行こうと思った。

「じゃ、じゃあね！また明日！」

『おい』

思い切り腕を掴まれてまたソファに座り込む私。

「っ、ちょ、なによ」

和は立ち上がって腕を掴んだまま、私を見下ろす。