Bittersweet (ページ7)

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年下の赤さん【S】ページ7

『これ誰に渡すんですか？』

営業先に車で向かっている時だった。

櫻井くんは私の直属の部下。

仕事覚えも早くて気も効くし、人の懐に入るのがうまい。

部下だけど尊敬できる部分がたくさんある。

そんな櫻井くんを好きになってもうどれぐらい経つか。

常に冷静に指示を出さなきゃいけない私はきっと周りから見たら固い人間だろう。
真面目に働き続けていると、どうしても男は引くんだ。

櫻井くんだって私が好意を寄せてるなんて一ミリも思っていないだろう。

だからこそ、今鞄の中に入っている赤色の包紙に入ったチョコを見られてとても動揺している。

だけど、冷静にと言い聞かせてなんとか答える。

「さっき渡したけど振られたの。ほっといてちょうだい。」

わたしとしたことが。

なんとツンケンな態度を。

でも表情は一切変えない。

交差点で左折するとまだ目的地じゃないのに何故か車を停める櫻井くん。

「ん、どうしたの？」

すると鞄の中からチョコを取り出して開け始めた。

「ちょ、えっ、な、何してるの櫻井くん」

『何って…、チョコ食べようと思って』

いったいどうしたものか。

櫻井くんはチョコを取り出して一粒口にほうばる。

『ん、んまい』

こちらに笑顔を振り撒く。

それは貴方の為のチョコだよって言えない私はほんとにダメだと思う。

「どうしたの櫻井くん…」

『だってもうこのチョコ誰にも渡さないでしょ？だから食べようと思って…、あ、そうだ…』

私が困惑しているのを他所に、まだ喋り続ける。

『Aさん、お礼に今度僕とデートしてください』

「はっ！？」

思わず目を見開いて驚いてしまった。

なぜそんなことを言うのか。

「え、なんで…」

『僕がAさんとデートしたいんです。年下は嫌ですか？』

そんな…。

そんなことあるの…。

もちろん嬉しい。

嬉しいのにその気持ちを伝える語彙力が私には備わっていないらしい。

「櫻井くんがそこまで言うならいいわよ。」

なんて可愛くないんだ私。

最低な返事だ。

『ふふっ、じゃ決まりですね？』

そう言うとまた車を走らせた櫻井くん。