・伊野尾side ページ20
「何かが、おかしい。」
光にそう言われたとき、俺は驚きを隠すのに精一杯だった。
そんなはずはないけど、光がおかしいなんて言うこと、きっと大ちゃんと知念のことくらいだから。
仕事の愚痴とかもあまり俺には言わないし、思い当たることは1つしかなかった。
伊野尾「……何が？」
八乙女「知念と大ちゃんのこと。」
伊野尾「…そう、？」
予想は、当たっていた。
八乙女「なんか、なんていうか、不自然なの。根拠は何もないんだけど。」
伊野尾「根拠ないんだ笑」
八乙女「でもさ、分かるじゃん。このー、なんていうの、こういう…こー」
伊野尾「悪い予感、的な？」
八乙女「そうっ！それ！」
この話の雰囲気とは似合わないテンションで"それ"と言った光。
この場をどう潜り抜けようか迷っている俺。
八乙女「マネージャーさんとか俺らの知ってる人が今回のことに関わってるような気がして。」
その言葉に、こういうときだけ鋭いんだから……、
と少し呆れた俺もいた。
そして、自分のできる精一杯の演技で、
伊野尾「それ、光の気のせいじゃないの？」
と言った。
……。
光と別れて1人で歩いていたとき、ふと、思った。
なんで、俺は山田を庇っているの？
と。
今の俺には、全くわからない。
ただ、純粋に山田を、それを知ったときのメンバーを、傷つけたくないから。
そう、思ってた。なのに、今は違う。
心にいる、なにか重い石のようなものがずっと俺の中にいるの。
この正体は分からないけど、。
今のこの状況が良いものではないと言うことだけは分かった。
そんな、とき。
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙｯ
あの、山田から連絡が来た。
一瞬スルーしようかとも思ったが、俺が出ない間もこの携帯は鳴り続けていた。
伊野尾「……もしもし、山田？」
「…ちゃんっ……助……てもう…や、だ……もとに……って」
ブルブルと震えた声で出た電話主。
きっと……いや、絶対。この声は山田じゃない。
伊野尾「……、大ちゃん？」
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