【38】 TEMPESTA／H.TOSAKA ページ38
◆
予報通り………
いや……
予報を上回る速さで…超大型台風の影響が、出始めていた。
オフィスの窓硝子越しに、吹き荒ぶ風音が聞こえ続けている。
「参ったな…」
こんな日に限って、トラブル発生………
本当なら、とっくに家に帰っているはずだったのに。
知らず知らず、溢れた………溜息。
「幸せ、逃げちゃいますよ？」
突然の声に、振り返ると………
社内一のモテ男・登坂広臣が…麗しい微笑みを湛えながら、立っていた。
「登坂くん⁉ どうしたの⁉」
「取引先で、捕まっちゃって。ついさっきやっと、帰社したんですけど…外、凄い事になっちゃいましたね。」
困った顔で微笑(わら)っても、絵になるくらい麗しい男………
いつも、数多の女性社員に囲まれている彼とは……彼の入社以来、初めて真面(まとも)に会話した気がする。
「東雲(しののめ)さんは、どうして？」
ドアから離れ、室内へと歩を進めた登坂広臣は…
何故か………
私の左隣りの席へと、腰を下ろした。
「登坂くんの席………そこじゃ、ないよね？」
「一度、座ってみたかったんですよ。東雲さんの、隣り。」
「えっ…」
思ってもみなかった言葉に、改めて左隣りを見ると…
左手で頬杖をつきながら、私を見ている……登坂広臣がいた。
「岩ちゃんが、羨ましくて仕方なかった。」
「えっ…」
「だって、毎日…東雲さんの隣の、この席で………東雲さんとも、よく話してるし。」
彼の言葉の意味がよく分からないまま、訪れた沈黙………
それを破るかのように、窓硝子を叩きつける雨音が強くなってくる。
「登坂くん………コーヒー、入れようか？」
何故か居た堪れなくて、椅子から立ち上がった瞬間……部署内が、暗闇に包まれた。
「う、そ…」
突然の暗闇に動揺し、よろめいた刹那……温もりに包まれた。
鼻腔を擽る、香りと…
伝わってくる、少し速い心音……
「大丈夫……俺が、ここにいるから。」
耳元で響く、その声で…
彼に、抱きしめらているのだと……気付く。
「Aさん。明かりが点くまで、こうしてて……いい？」
速まる自分の心音にも気付き、上手く言葉が出なくて…
彼の腕の中で…
ゆっくり、頷いた……………
◆
【39】 子悪魔＆小悪魔？／K.YAMASHITA→←【37】 ZERO→zero ／S.SAKURAI
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» 舞花さん。ありがとうございます！ 本当…このインタビュー、いつか実現しないかなぁと思う、今日この頃です。（笑） (2018年10月15日 21時) (
レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 是非、翔ちゃん健ちゃんコンビを見てみたいものです(≧∇≦) (2018年10月15日 18時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - サハラさん» 遅くなりました！m(_ _)m 訪問＆コメント、本当に有難う！ 超短編なので、読みやすいかと思います。（笑） 気楽に、お楽しみ下され♪（笑） 感想などあれば、またお聞かせ下さいな♪(^-^) (2018年7月11日 1時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
サハラ(プロフ) - 昨夜に一度、そして今もう一度来てしまいました(’-’*)♪美味しい所を一口ずつ、まさにより取りみどりの贅沢♪♪愁ちゃんの文章の大人な空気感がやはり好きです♪またつまみ食いしにきます！ (2018年7月7日 11時) (レス) id: 5a1d2d4503 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2018年7月5日 10時
