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その時は気づきませんでした。





私はあなたが好きになったんだと1年くらいは思っていました。




でも2度目の春、夏、秋を経て、

私はあなたに恋をしていたのではないのだと悟りました。






私はあなたの、

彼に似ているところが好きだったのです。





あなたは私を、私自身を好いてくれているのに、

私はあなたの向こう側に彼を見ていたのでした。








きっとあの時は、

心がボロボロすぎて、

知らず知らずのところで、

私は彼の面影をずっと追いかけていたのです。






そう思ったら、

あなたの優しさや、与えてくれる幸せは、

私に罪悪感を与え続けていたのでした。






日に日に後悔は増えました。








そのうち私はあなたのそのまっすぐ私を見つめる目をちゃんと見られなくなりました。







私だけを見つめてくれているあなたに、

申し訳なさでいっぱいでした。




きっとずっと分かっていました。



こんな気持ちを誤魔化しているのは馬鹿らしいのだと。






だからあなたが紅葉を見せに行ってくれた次の日、

私は有給をもぎ取ってあの家から私の存在をとことん消しました。









そして私はあなたから離れました。




あなたが私に縛られなくていいように。



あなたはちゃんと魅力的なのに、

私はあなた自身を見られないのですから、

ちゃんとあなた自身を愛してくれる人を探して欲しいと…そう思ったからです。





あなたを好いていなかった訳では無いのです。





ただ申し訳なかったのです。



幸せになって欲しかったのです。

じゃあ急に出ていかなくてもいいじゃないかと言うかもしれません。



でもあなたはきっと止めるでしょう?


それでもいいからって。



そんなのは悲しすぎませんか?




自分を誰かと重ねられて嬉しい人間などいるわけないのですよ。






桜を見れば、あぁ彼とも来たな。

草餅も食べたな。

なんて思い出されなくないでしょう?

僕だけ見てよってなるでしょう?






人間にとって、

自分を自分だと認められたいと思うことは普通の欲求なのですから。




だからごめんなさい。


本当に私のわがままなのだけれど、

幸せになってください。







ありがとう。







そしてさようなら。









あなたへの最後の笑顔と共に、

寒空の下私が零した熱い雫は、

しまいには私たちの関係のように冷え、

ついには拭き取られて消えていきました。

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作者名:ロマネスコ | 作成日時:2018年11月11日 17時

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