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side私
20××年 冬
あなたと別れて、最初の冬。
いつも以上に空気を冷たく感じて、
私はふいに空を見上げました。
今日は東京に初雪が降りました。
ヒラヒラとそれはそれは軽そうに、
私たちの元へと降りてきました。
冬だなぁと漠然と感じます。
あなただったらきっと
「雪が降ったから鎌倉でもいこうか」
って言うんでしょう。
あなたも私も、移ろう四季が好きでした。
あなたは色んなところに私を連れて行ってくれました。
とてもとても幸せでした。
でも、同じくらい苦痛でした。
私にもあなたの前に、彼氏がいました。
所謂元カレと言うやつですね。
彼は、あなたによく似ていました。
もちろん外見は違います。
中身の方です。
彼も私とあなたと同じで、
四季が好きでした。
あなたと同じように色々なところに連れて行ってくれました。
あなたと同じように甘いものが苦手でした。
本当によく似ていたのですよ。
でもある日──彼は急死してしまいました。
原因はくも膜下出血でした。
彼と私はもう結婚しようかと思っていて、
彼の御両親とも面識があったので、
お義父さまとお義母さまは私に連絡してくださいました。
上司に事情を説明して、
急いで彼の元へ向かいました。
部屋に入ると、
お義父さまとお義母さまの向こうに彼が見えました。
彼の顔には白い布が被せられていました。
「ねえ……うそ…だよね…?ねえ!!!!やだ…!置いてかないでよ!!!!」
思わず叫びました。
死んだことを信じられなくて、
いつも私よりもずっと温かかった、
男らしい彼の手に触れました。
──彼の手はとても冷たいものでした。
そこで私は彼が死んだことを知りました。
それからというもの、
私はなかなか前向きに生きていけませんでした。
─────あなたと会うまでは。
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作者名:ロマネスコ | 作成日時:2018年11月11日 17時