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その次の日






僕は仕事に行かなければいけませんでした。





君はお休みの日でした。




「いってきます」というと、

「いってらっしゃい」と、

一周まわって気持ち悪いくらいの綺麗な笑顔で僕を見送ってくれました。









ガチャっ…キィ……





「ただいま。」





そう言ったいつもの僕の言葉に、

今日は返事がありませんでした。








もう寝てしまったのかと思い、

リビングへ向かいました。







そこで僕の目は点になったような気がします。









君のものが、何一つなかったのです。








急いでほかの部屋も回りました。





髪の毛1本たりとも、

君のいた痕跡はありませんでした。







僕の頭を焦燥が駆け巡ります。


なんで。なんで。どうして。





壊れたCDのように何度も何度も僕の頭の中で、

その言葉だけがループしました。








そこでダイニングテーブルに置いてあった手紙に気づきました。




手紙には、震えた感じの、

少し涙で滲んだような文字が細々と書かれていました。









『もう私を探したりなんかしないでください。


勝手に出ていってごめんなさい。


幸せでした。


あなたは何も悪くありませんでした。


ただ私の身勝手を許してください。




そしてお願いです。


私はあなたが大好きです。


だから、私じゃない人と幸せになってください。


あなたは優しい人だからきっといい人が見つかるでしょう。


ごめんなさい。


さようなら。


ほんとにありがとう。』









僕の目から、何粒もの雨が振りました。






君が僕にくれた最後の言葉の上に、

君の涙を上書きするようにその雨はしとどに降りました。









大人の男が1人、

そのマンションで泣き崩れました。









一体僕はいつぶりにこんなに声を上げて泣いたのでしょうか。









君がなぜ出ていってしまったのか、

僕には分からなくて、ただ泣きました。

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作者名:ロマネスコ | 作成日時:2018年11月11日 17時

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