子守唄 ページ49
ひと一人分空いていた布団の隙間を詰めてそばに寄って...
私も布団を掛けたまま、まあるく縮こまっている善逸を布団ごと抱き締めた。
一瞬ビクリと震えたけど、私だと分かれば直ぐに体を弛緩させた。
『私の声だけ聞いてて。』
そう善逸に呼びかけた。
前に疑問に思って聞いたことがある。
善逸はいつもそんなに沢山の音に囲まれてて辛くないの?って。
その時、「慣れたっていうのも大きいけど、聞く音をある程度選んで聞けるようになったから、今は大丈夫だよ」と言っていた。
今はそれに賭けてみる。
すぅっと大きく呼吸をひとつ。
それから私はある歌を口ずさみ始めた。
『摘んだ蓮華の花びらを
水面に浮かせゆりゆらら
あの日無くした永久の糸
もうこの手には帰らない
いつまでもいつまでも
あの日のことを覚えていて
今度はもう千切れぬように
今を紡いでいきましょう』
高く低く、優しい子守唄が雨音と雷の音の中に響く。
歌の一番が終わったところで、善逸の頭が布団から出てきた。
洪水になるんじゃないかと思うほどに泣き腫らした目を、手近にあった手ぬぐいで擦らずぽんぽんと拭いてあげる。
その間もずっと静かに涙を流しているのを見て、やってしまった、と思った。
この歳にもなって子守唄だなんて、巫山戯ていたかもしれない。
元いた町の子供たちとか、任務先で子供をあやしたりとかする時によく歌っていた、うた。
好評だったけれど、善逸には不協和音だったのかな...
『あ、の...ごめん、ね.....嫌だったよね。この歳で子守唄、なんて...』
離れた方が...なんて思って、少し身体を離そうとすると、がっと強い力で抱き締められた。
善逸「いか、ないで...」
『...え、』
善逸「羚凰まで、俺を置いてかないでくれよ...
...ずっと、ずっと誰かに子守唄を歌って欲しかった。
俺だけの為に、歌って欲しかった...」
その言葉を聞いて、少し息が詰まった。
本当に私たちは“似たもの同士”だ。
私もそうだった。
欲しい時にそれは貰えなかった。
そうだ。だから私は、それを埋めるようにあんなに歌ってたんだ。
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ロマネスコ(プロフ) - かりんさん» ありがとうございます!一応一週間に一回定期更新していますが、書ける時書けない時があるので長い目で見ていただければ幸いです(*^^*) (2020年8月31日 15時) (レス) id: 87cf8bc382 (このIDを非表示/違反報告)
かりん - 気になるぅぅ!応援してます! (2020年8月30日 20時) (レス) id: c30d21e2cb (このIDを非表示/違反報告)
(ー∀ー)イト - 説明文(?)の所に善逸オチとかいてありました。ちゃんと見ずに質問してしまってすみません!!失礼しました。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
(ー∀ー)イト - 質問です!こちらの作品は宇髄さんオチですか?? (2020年8月22日 18時) (レス) id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロマネスコ | 作成日時:2020年3月31日 21時