女として生まれた俺は男として生きることになりました 弐

一緒に見つけよう ※善逸視点 ページ28

｢俺、捨て子なんだよ。

生まれて直ぐに名前もつけられずに、臍の緒つきっぱなしのまま籠に入れられて奥まった路地に捨てられてたんだって。


運良く優しい女の人が拾ってくれて、面倒みてくれた。

でもその人も、まぁ俺が自分の子じゃないからある程度大きくなったら他の人に託した。

そこからは拾う、捨てられるの繰り返し。



いつまでも同じ擦り切れた着物を着て、飯はあるかないか微妙くらい。時にはゴミを漁って食いつなぐしか無かったよ。





奉公できるようになったら、少しは生活が良くなった。

相変わらず寝る場所は馬小屋みたいなところだし、飯もあってないようなものだったけどさ、少しの日銭は貰えるし、悪くはなかったよ。

たださ、一つだけ問題があったんだよな...







──この耳。



寝てる間も聞こえているから、俺が寝てる間にした内緒話を俺がするとすごく驚かれて気味悪がられた。それで奉公先を追い出されたこともある。

俺自身も、そんなたくさんの負の感情を聞くのは本当に辛かった。





俺、知らなかったんだ。

こんなに聞こえるのが普通じゃないこと。普通のことだと思ってた。何度かお前はおかしいって言われてやっと気づいた。


みんなはこんなに聞こえないんだって。人が囁く悪口も、人から溢れる感情も、嘘の音も全部聞こえないんだよな。


普通じゃないって分かったらまぁ隠すようになるんだけどさ、聞きたくなくても聞こえちゃうんだからしょうがないだろ。




きっと羚凰も俺も、愛され方も愛し方も知らないんだな。求めてはいるけど、分からないまま無闇に。

だからさ、一緒に見つけよう。一緒に探そう。｣






そう言い終えると、羚凰は泣いて伏せていた目をパチリと合わせた。日に当たって翡翠の瞳がびいどろみたいに輝いててすごく綺麗だ。呆気にとられたてぽかんとした顔をしている。


それからゆっくり笑って、綺麗な声で『ありがとう』と言った。




やっぱり羚凰は笑っていた方がいい。自分に素直にいる時が一等いい。

もしかしてこれって…アレですか？ ※善逸視点→←俺と似てる ※善逸視点 ＋作者からインフォメーション

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