伍 ページ10
「ふわあ…」
医者として日本に戻るのは五、六年ぶりだ。組織の方だと何回かは戻ったりもしたけども。
主に医者の仕事はアメリカの方でこなすことになったし、人種が入り交じってるおかげで見目もそこまで目立たない。あくまでも日本よりは、だが。
日本特有の湿った空気を浴びながら飛行機から降りる。
横を通り過ぎて人や遠くにいる人の視線がこっちに集まるのはもう慣れっこだ。
ふふん。俺は五条国永の傑作だからな！俺が美しいのは当然のことだろう！
そんな大包平みたいな事を考えながら太陽を見上げ目を細める。
「やっぱりこっちのが落ち着くな…」
日本の病院への技術提供。難病の子供の手術。
やらなければならないことは山ほどあるのに、きっとジンはここにさらに組織の仕事を積むに違いない。あいつは鬼だ。
あの長谷部でもそんなむちゃくちゃな主命は断ってたぞ！
「プライベートがほしい…」
趣味イコール仕事(黒)だからそんなに参ってる訳では無いんだが、やはり一日中ごろごろする日があってもいいと思うんだ。
刀でも知ってる。二度寝は超気持ちいいって。
景趣が冬の時は布団から出たくなくて困ったんだよなあ。
郷愁を覚えることがないとは言わないが、やはり日本に戻ったことでなんとなくセンチメンタルな気分になっているらしい。
ﾙﾙﾙﾙﾙ…ﾙﾙﾙﾙﾙ…
「あぁ？電話か…もしもし」
「ハアイ、アラック。日本に着いた頃かしら？」
「まだ空港なんだが、ベルモット。」
一体誰から俺が乗る飛行機の便なんて聞いたんだか。組織のブラック加減(二重の意味)にはため息が出るぜ。俺は白の方が好きなんだ。
「おいおい、少しくらい休みをくれよ。どうせまた仕事のお知らせだろ？」
「ご明察。貴方の知らない情報もそこで聞いて？最近色々あったのよ」
「はいはい。で、どこに誰と待ち合わせだ？」
言った途端にメールが届く。
「バーボンと廃工場ね。bye.」
言うだけ言ってきりやがった…
はあ。そんじゃ向かうか。そこまで遠くないのが救いだな…
「こんにちわ。アラック」
「遅くなったな」
「いえ。時間通りですよ」
にこにこと笑顔を崩さないバーボン。こいつ何考えてるかわかんないんだよなー。でも、ジンからノックと疑われて散々な目にあっていたらしいのは知ってる。ウイスキーの名を冠するほか2人はノックだったんだから。
俺としても組織が無くなるのはちょっと…かなり困る。主が捕まるのも困るし、俺のSAN値が直葬する。
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作者名：トイプードル | 作成日時：2018年10月30日 8時
