漆 ページ12
「量が少ないな…」
見目は老けずとも体の盛りを超えた32歳。
アメリカの食事は簡単に言うと切って！焼いて！食べる！みたいなもんでどちらかと言うと少食な俺はなれるのに時間がかかったが、日本に帰ってくるとどうやらきちんと適応していたらしいと思い知る。
ハンバーガーもちっさいし、ポテトも少ない。
それで値段は変わらないのだからなんとなく損した気分になる。
「ご馳走様」
ポイポイくずかごに放り込んで踵を返す。
そう言えば、パーティってどこでいつあるんだ？
早々にゴミを片さずに席を借りればよかったぜ。外は日差しが厳しいな。
「えー…なになに？明日！？マジかよおい！」
裏返しても日に透かせてもその文字は変わらない。
ってことは本当に明日か！
「礼服置いてきちまった…仕方ない…」
無駄金使う気もないし、ここは一丁裏技を使わせてもらいますか。
スマホを取り出してコールするのは銀幕の大スター、シャロン・ヴィンヤードではなくその娘ということになっているクリス…ベルモットだ。
「ハァイ、アラック。先程ぶりね？何かあったの？」
「おっす、ベルモット。いくつかスーツ送ってくれないか？パーティーが明日だなんて知らなかったからリクルートスーツしかないんだが。」
そういうと耳元で大きな声で笑われる。
うるっせ！眉を顰めてスマホを耳から離した。
「良いわよ！いつものでいいんでしょ？」
ジンに見られるといつも嫌そうに見られる「いつもの」。
俺は白が好きなんだ！そう公言してるし、パーティーでくらい好きな服きて仕事してもいいだろう？
黒い糊の効いたシャツの上に白の上下。一応黒も身につけてるんだぜ？
「サンキュ。」
ポケットに押し込んで歩き出す。
どこ行こうかな…俺がしばらく泊まるホテルか？
組織もセーフハウスの一つでも貸してくれればいいのに。
「時間は明日の18:00から、場所は…鈴木財閥のホテル。参加者にはーっと」
赤線のひかれた「毛利小五郎」「毛利蘭」「江戸川コナン」
「江戸川コナン…？」
誰だそれ？
さっきの話には出てこなかったよな？
端末に指を滑らせ検索検索ぅ！
「ほおー、キッドキラーか。キッドといやあ宝石ばかり盗んでは持ち主に返すとかいう怪盗。…そのライバルとして鈴木次郎吉に信頼を置かれている、と。」
子供のくせに凄いじゃないか。
なんとなくベルモットの友人の旦那に似ているような気がしないでもないが。
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作者名：トイプードル | 作成日時：2018年10月30日 8時
