壱 後の後 ページ5
「君たちが善良なのは知っているさ。
それにこんなに自由に過ごした後本霊に帰ったら退屈すぎて死んでしまうかもしれないからな！
…だから、気にしなくていい」
軽く言い放って片眼まで瞑ってみせたのは
ばあちゃんに顕現されてから、本丸に20人もいなかった頃から戦い続けていた鶴丸だった。
おれがダメダメだった時も、呆れた顔をしながらも戦術を教えてくれた一振り。
「な、皆。そうだろ？」
その言葉に次々と賛成の声が上がる。
おれはまだペーペーの新米で、
父さんやばあちゃんのが良かったんだろうなとか何回も考えたけど、こんなに認めてくれていたなんて。
こんなに別れが早くやって来るなら、もっとやりたいことがいっぱいあったのに。
今までの思い出が頭の中を駆け巡る。
涙が止まらなかった。
「そういえばさ。こんのすけと担当さんはその情報どこから聞いて来たの？」
加州が首を傾げて問いかける。
「偶然と言いますか…研究部が最近やけに静かなのが不気味で、通信を傍受したんです。
その時、たまたま審神者様の本丸の話が出ていまして。」
「確認できるまでわたくしと担当様の秘密としていたんです」
涙が引っ込んだ。
担当さんアグレッシブだな…
なんでこんのすけがもう知ってるんだろうとか思ってたら二人は繋がってたのね。
審神者仲間はずれかよ！
一人で落ち込んでいると、そんなことをしている暇はないのだというように門が叩かれた。
「政府術具研究科です。褒賞の件について伺いました」
機械的な声。その容貌は顔布に隠されて把握できない。
唾を飲み込んでみんなと頷きあった。
「皆さまのご協力のおかげで、戦争に勝利することができました。
わずかながらですが、その働きへの見返りを用意させていただきました。
こちらをご覧ください」
渡された薄い冊子をめくる。
「刀剣の皆様に自由を」「デメリットはない」だとか、さっき聞いた話が当たり障りのない受け入れやすい言葉選びで書かれている。
この人の低姿勢も相まって、先に聞いてなかったら騙されていた…と背筋が凍る。
「この計画は、他の本丸には？」
「いえ、この本丸が1件目です。秘蔵技術ですので…」
大量生産できるものでもないのかもしれない。
それに、やはり公式に認められてはいないみたいだ。
「どうでしょう。同意が取れ次第実行に移したいのですが」
「…はい。同意します」
(やれることはやった…か。)
この日、おれの…おれたちの戦争は終わった。
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作者名：トイプードル | 作成日時：2018年10月30日 8時
