05 回想 ページ6
子供の頃既に、私は自分の親が普通の人ではないことを理解していた。
それは彼らの仕事や、会話の内容(ほとんど分からなかったけど)からしても、更には一人娘の私への教育からしても。
本の中の同い年の女の子はみんな友達と一緒に遊んだり、家族と遊園地に出かけたりしているのに、私はいつも射撃の練習ばかりだった。
他にも格闘技や色んな知識を叩き込まれて…でも別に不幸だったかと聞かれると、そんなことはない。
両親は厳しくもあったけどなんだかんだ優しかったし、生活に不自由はなかった。
もうそんな両親が帰ってこないことを真っ黒の服を着た奴らから聞いた時は、腸が煮えくり返りそうだったけど。
単純に両親の復讐がしたくて、命乞いまでして、彼らの言うことを聞いた。
組織の一員になって、コードネームを得て。
もっともっと、上にいかないと。
頭の中は常にそれだけだった。
何も知らない子供でごめんなさい。
私がもっと色んなことができたら、まだ家族3人で楽しく過ごせていたのかな。
今更遅いかもしれないけど、でも待っててね。
私が必ず、あの組織を…
それでも…
『…くそっ』
使い物にならなくなったライフルを捨てる。
体はあちこちボロボロで、もう動けそうになかった。
今から処置をしても、おそらく間に合わないだろう。
組織の人間に連絡をする気は起きなかった。
悔しいなぁ。
終わりよければ全てよし、なんて言葉があるけれど終わりが良くなかったら何もかもよくなかったことになるのだろうか。
やり直したいなぁ。
でもどこからやり直せばいいのかなぁ。
あぁだめだ、目が霞んで、1周回ってあんなに痛かった体が痛くなくなってきた。
いよいよダメっぽい。
ねぇ神様。
もしやり直せるなら、次はもっと………
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作者名：雨宮 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時：2022年5月29日 7時
