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どこかから花火の音がする。
花火大会でもやっているんだろうか。
まぁ、夏休みだもんなぁ、なんて思う。
花火の音が目覚ましになったのか、ずっと眠っていたヒロが起きた。
熱を計ってみれば、もうほとんど下がっていて、やっぱり疲れてたんだね、なんて言って。
起き上がったヒロが体バキバキ、って笑うから途中で起こした方が良かったかな、とちょっと申し訳なくなってしまった。
『あ、そうだ。さっきね』
するとリビングの入口の方からスコッチが女を連れ込むようなタチには見えなかったな、と声がした。
びっくりして振り向くと、長髪。切れ長の異国的な目。そしてなによりカモフラージュはしているが持っているライフルが彼が誰であるかをそのまま表している。
「……ライ。早かったな、まだしばらく帰ってこないって聞いたけど」
「思ったより早くカタがついたんでな。ところでさっきも聞いたが、スコッチの知り合いか?」
「そう。残念ながら君が期待してるような浮いた話はなにもないけど。バーボンに頼まれて看病してくれただけさ」
『…はじめまして。シンフォニーっていうんだけど知らないかしら?』
動揺してるのがバレないように一生懸命笑顔を浮かべた。
『シンフォニー』のためのメイクしてきてよかったー!と思いながら手のひらはじっとりと汗をかいている。
…怖いな。
ジンたちみたいな組織の人間を相手にするのとは少し違う。
「聞いたことはある」
…別に私、貴方みたいに秀でた特技はないが。
組織の中ではそこそこ有名なんだけど、と喧嘩を売りたくなる。
レイが「あんまり会わせたくない」と形容する理由がなんとなくわかった。多分、レイとは合わないタイプだろうな。
『じゃあ、部外者は帰るね。スコッチ、その袋、全部あげる。お大事にね』
適当に荷物をまとめて、ライの横をすり抜けながら外に出る。ずっと適温の部屋にいたから、外が蒸し暑い。
待って、という声と同時に後ろに引っぱられた。
「色々ごめん。帰ってくると思ってなかった」
『全然気にしてない。それよりそんなに動いて大丈夫?病み上がりなのに』
「大丈夫。…ちゃんと顔見ておきたかったっていうわがままだけだから」
『…そっか。………ねぇ、でも後ろから抱きしめてたら顔見えなくない?』
「…そ、れは、ちょっと思ってた…」
笑いながら、私は彼に向き直って、またねと言った。
キッチンにスープ作ってあるから、よかったらどうぞとも。
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作者名:雨宮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時:2022年5月29日 7時