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これ以上アメリカにいても、おそらく得られるものはほぼなにもない。
そう判断したから、私は日本に帰国するための準備をした。ベルモットに頼んで協力してもらったけど、なんだかんだ遅くなって、戻ってきたのは半年経った11月頃だった。
そんな私の今1番の目標は、NOCとの接触と、ヒロを助けることだけど。
NOCってそんなに人数いるもんじゃないし、まさか自分がそうでーすって服着て歩いてるわけじゃないから、とりあえず前世での記憶だけが頼りだ。
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そんな経緯と動機で日本に戻ってきて、今までまったくしたことのない公安の仕事もするようになったけど、これがまためちゃくちゃキツイ。
こんなのとよく組織の仕事両立してたな、2人とも…と優秀な同期と上司に頭が上がらない気持ちになる。
『…アメリカが懐かしい』
「帰りたくなった?」
休憩室で天を仰いでいると、笑いながら缶コーヒーを差し出してくれるヒロは癒しになりつつある。
…時差もないし、国際電話を使わなくていいし、なによりそれなりの頻度で会おうと思えば会えるんだ。
そんなの答えは決まっている。
『…いや、別に帰りたくはないかも。この街、やたら犯罪多いけど』
「それはまぁわかる。たまに信じられない報告書飛んでくるよな。…ところで、ちゃんと寝てる?」
『…昨日の真夜中に電話で叩き起されて、そのまま来たから…あー…2時間くらいは寝たかもね』
隈できてる?と聞けば、いや単純に顔色悪い、と返ってきて納得する。
アメリカにいた頃から実感しているが、どうも徹夜とかができない体質なんだ。
前世は多少寝なくても平気で、そこが自分の長所だと思ってたのに、今世はもういっぱい寝たい。
と言ったら、風見さんに公安としては致命的だからその体質なんとかしろと言われた。どうしろと。
「…寝る?」
『いや、今仮眠室なんか行ったらもう夜まで起きない気がする』
仮眠どころでは済まないだろう。
誰かに起こして!と頼んでも起きれる気がしない。
「いや、横になるんじゃなくて」
『ん?』
「…肩か膝か、貸しますよって意味で。ちょっと経ったら起こしてあげる」
…普段なら照れて断ってた。
なんなら、眠気も一気に覚めただろう。
でも今はとにかく眠くて。
適当にお礼を言って速攻、私はヒロの肩にもたれて眠り始めた。
私の手からそっと缶コーヒーを抜き取ってくれた彼が真っ赤な顔をしていたなんて、私は知らない。
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作者名:雨宮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時:2022年5月29日 7時