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ガラスが割れる音、倒れる標的、なにがあったのかを理解した人々の口から出る悲鳴。
それを物陰から見ながら、私はパーティーの会場を後にする。
よくある…という言い方をしていいのか分からないけど、組織にいる中ではまぁよくあるタイプの仕事で、あっという間に片をつけることができた。
部屋に戻るエレベーターの中で、彼に連絡しようとして、連絡先を持っていないことに気付いた。
なにかあったら連絡してって、言ったのそっちじゃない…と呆れながら、まぁあの時はお互い動揺してた、うん。
向かいのビルから狙撃するって言ってたけど、どこからやったんだろう。
あまりにも鮮やかすぎて、元狙撃手としてはちょっと興奮してしまった。
『ただいまぁ』
レイにUSBメモリを渡して、ノートパソコン使っていいよ、とそれも渡す。
標的は用心深そうなタイプでもなかったし、大した情報が入ってるかはなんとも言えないが。
着替えてシャワーを浴びて、レイの元へ行けばパソコンとにらめっこしていた。
『どうしたの？』
「これ、途中までは普通に見れたんだけど、これより先はロックがかかってる」
『貸して』
できるのか？と聞かれるから、まぁ人並みには、とだけ答える。
…組織に潜入したばかりの頃、両親について調べたくてハッキングを覚えたのだ。結局両親についての情報はなく、ほぼ使われることがなかったスキルだ。
ガチャガチャといじっていると、ドアが開く音がする。
「…ただいま。ねぇ、帰ってくる途中に変なのに絡まれたから返り討ちにしちゃったんだけど、まずかったかな」
帰ってくるなりそんなことを言う彼に苦笑してしまう。
…あぁ、ダメだな、さっきのことが忘れられなくて目が見れない。
ヒロがシャワー借りるね〜といなくなったところで、レイがぽそっと聞いてきた。
「なんかあったのか？」
『…なにもないけど？』
「いや、いつもならさっきのヒロに対してあなたたちってなんでそうトラブルメーカーなのよ、とか言いそうだから」
『…それ、私の真似？』
「わりと上出来だったと思うんだけど」
『…そこは言及しないでおく。ほんとになにもない、ただ私がグラグラしただけ』
グラグラ？と首を傾げるレイのことはもうスルーだ。
…本当に、ちょっとグラグラしただけ。
ずっと会ってなかったから、もう「好きな人」じゃなくなってるかな、と思った人をやっぱり好きだと思っただけだ。
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作者名：雨宮 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時：2022年5月29日 7時
