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ある日
そういえば、とふと思い立った。
私、東堂Aってそもそもどういう扱いなんだろう。
スマホの中にはまったく覚えのない大学の卒業式の写真が入っていたし、『お父さん』『お母さん』と書かれた連絡先も存在している。
他にもSNSのアカウントはいくつかあるし、漫画のアプリも入っていたりする。
普通の女の子の携帯の中身がどんなのかは残念ながら知らないが、それでも特に変なところはない。
このお父さん、お母さんも誰なんだろうな。
私の…私の本当の両親のことなんだろうか。
『家、近いな…今度の休みにでも行ってみるか』
٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。
結論だけ言えば、私の両親は本当に『私の両親』だった。
…伝わるかな、これ。
ずっと組織の一員として仕事をする2人しか見てこなかったから、テレビを見ながらコーヒーを飲むお父さんを見た時は泣いたし、お母さんの料理を久しぶりに食べて、また泣いた。
2人がこの世界では生きてくれていることが本当に嬉しい。
泣きっぱなしの私を見て、2人は変な顔をしながらも頭を撫でてくれた。
恥ずかしい、という気持ちもあったけどそれ以上に嬉しくて嬉しくて、また泣くかと思った…。
『また来るね。元気でね』
そう言って家を出た。
…両親は私の知る両親と何一つ変わらなかった。
それでも私の部屋だという部屋には見覚えはなかったし、アルバムの中で笑う私の写真も、いつ、どこで、なんの写真なのか前後のエピソードはまるで思い出せなかった。
まぁ、両親が生きててくれただけでいい。
それだけで、なんだかもう無敵な気がする。
ぼんやりした頭でふらふら歩いていたから、いつの間にか居酒屋などが並ぶ繁華街に入っていることに気付いていなかった。
でも耳に馴染んだ声で呼ばれて振り向けば、女の子侍らせている萩原くんと、残り4人。
『毎度毎度、神出鬼没だし、状況わかんないし、ほんとになんなの?』
と、突っ込んでしまったのは許して欲しい。
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作者名:雨宮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時:2022年5月29日 7時