episode37秋side ページ39
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早いもので、もう金曜日になった。
早川と約束した日曜まで、もうあまり時間が無い。
……いや、準備は万全だし、何も焦ることはない。
そうだ、俺は黙って待つのみ。
そうすれば、何事も無く日曜になり、また佐藤ふたばとして早川に近づき、あいつの心に居座る。
大丈夫、何も問題ない。
ふたば用携帯電話も用意したし、女子っぽい仕草もいくつか習得した。
せっかく料理スキルを身につけたのだから、お菓子でも作って持っていこうか__
ごちゃごちゃした頭の中を整理するのは、簡単ではなかった。
ただ、第1理科室への移動中に、始業5分前を知らせるチャイムが鳴り響いたので、一旦この脳内整理はやめにした。
理科の教科担任は何かと難癖をつけて説教をしたがるので、生徒の間では説教を愛し、説教に愛された……などと、最近の芸人に準えて嫌味を言われている。
急がないと、と廊下を走った。
良くないことだが、説教を愛したあの先生のぐだぐだ説教を避けるためとあらばやむを得ない。
角を曲がった時、何かにぶつかった俺は、そのまま尻もちをついた。
「いって……あっ、悪い、大丈夫か? ……げっ」
「ちょっとちょっと、いきなりぶつかっておいて「げっ」? それは失礼なんじゃないかなぁ、立花くん」
ぶつかってしまった相手に差し出した手も、思わず引っ込んだ。
そこに居たのは、なんと因縁の早川優だったのだから。
言葉だけで見たのなら、怒っているように見えたかもしれないが、早川はそう言いながら、完璧に俺をからかう顔をしていた。
「……悪かったな。それより、もうすぐ始業なのにどこ行くんだ? 理科の先生、怒らすと面倒だぞ」
俺が尋ねると、早川はへらっと笑う。
「ご心配ありがとう、立花くん。でも時すでに遅し……もう既に怒らせちゃったんだよね」
「は?」
早川は言いながらふふっと笑って立ち上がった。
理科室と真逆の方向へ歩いていく後ろ姿に、俺は呟いた。
「……ほんと、わけわかんねぇやつ」
その後、なかなか来ない俺を心配してか、理科室から幸太郎が顔を出した。
悪い、遅くなった、と幸太郎に言って席につくと同時に、始業のチャイムが鳴った。
どうにも不機嫌そうな先生のことが気になり、隣の席の女子に聞くと、なんと今日は元々ピリピリしていたのに、早川が「あんまり怒ると婚期逃しますよ」と言ったらしい。
俺は言葉を失った。
馬鹿にも程がある。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時