episode21秋side ページ21
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ココアもチーズケーキも半分ほど胃の腑に収めた。
美味しいか、と尋ねられたので、美味しいですと答えると、早川が言う。
「ふたばちゃん、敬語じゃなくていいよ?」
「そうですか……?」
「うん。同い年だしさ」
「あれ、私歳言いましたっけ?」
同い年だと言うその発言に違和感を覚える。
年齢など、言っただろうか。
いや、実際同い年なのだけど。
「言ってたよ? お互い名乗った辺りに」
「記憶力が……」
「あはは」
気付かないうちに脳の老化が進んでいるのかもしれない。
今度病院へ行こう、そうしよう。
なんてくだらないことを考えていると、カフェのドアにつけられた鈴のようなものがカランカランと鳴った。
誰かが来店したのだろうが、別に気にならない。
しかし、店内は混み始めていて俺達の隣の席は空いている。
この席に来てもおかしくないな。
俺はその程度に思い、またココアのカップを手にした。
「あ! 早川くんだ!」
突然、早川の名を呼ぶ女子の声が耳に入る。
早川の知り合いなら俺の知り合いという可能性もあるかもしれない。
おずおずと声の主の方を向くと、そこには見知った顔が。
おいおいまじかよ、と心の奥で呟いた。
藤沢南と野口栞奈、俺達のクラスメイトが居たのだ、そこに。
南はともかく、栞奈とは1年近い付き合いになる。
自信満々で計画を実行した俺でも欺けるか微妙である。
「あぁ、確かクラスの……」
「藤沢南! こっちは親友の栞奈!」
「南ちゃん、栞奈ちゃん、よろしくね」
「うん、ところで彼女?」
南はガンガン喋るが、栞奈は黙りこくって一言も発さない。
最近はもう慣れていたので忘れていたが、こいつは通常、人見知りなのだ。
何かに夢中な時は、人前でも大声を出せるし知らない人とも会話できるようだが。
「彼女じゃないよ。そこで会った子」
「へぇ、そうなんだ!」
栞奈にバレたくないのであまり話したくないが、ここはさすがにどうしようもない。
このまま黙っていると礼儀がなっていないと思われかねないしな。
「佐藤ふたばです。こんにちは」
出来る限り自然な微笑みをしてみせたつもりだ。
果たして3人の目にはどう映っただろう。
「ふたばちゃんね! よろしく!」
南は相変わらずだが、栞奈は少しだけ笑ったような気がした。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時